発汗は、体温調節に不可欠な生理機能です。しかし、そのメカニズムは完全には解明されておらず、発汗不全や発汗過多に対する治療法も限られています。
名古屋市立大学 なごや先端研究開発センターの富永真琴特任教授らの研究チームは、温度感受性TRPV4チャネルがアノクタミン1と機能連関して水分泌を伴う外分泌(脳脊髄液分泌、唾液分泌、涙分泌)に関与することを明らかにしました。
今回の研究では、マウスの足底にある汗腺の分泌細胞にTRPV4チャネルとアノクタミン1が共発現していることが確認されました。さらに、正常なマウスでは室温の上昇に伴い発汗量が増加しますが、TRPV4欠損マウスでは発汗量が低いままでした。また、TRPV4欠損マウスは、正常なマウスと比較して、ツルツルの斜面を登るときの成功率が低いことも判明しました。
さらに、ヒトの難病である特発性後天性全身性無汗症の汗腺では、TRPV4蛋白質の発現が低いことが確認されました。この発見は、発汗制御薬の開発に新たな知見をもたらすものです。
従来、発汗は脳からの指令によって制御されていると考えられていましたが、今回の研究により、局所の汗腺でも温度を感じて発汗を促していることが明らかになりました。発汗のメカニズムがより詳細に解明されたことで、新たな発汗制御薬の開発が期待されます。
この研究成果は、eLife誌に掲載されました。