熱中症対策義務化、認知度は高いが実施は遅れ気味
エフアンドエムネット株式会社が実施したアンケート調査によれば、2025年の労働安全衛生規則改正に伴う熱中症対策の義務化について、認知度が高い一方で、実施の遅れが顕著であることがわかりました。
調査の背景
2025年6月、熱中症対策の法的義務化が施行され、企業に対して対策の実施が求められています。施行からまだ2カ月が経過していないため、企業や事業所ではどのような状況なのでしょうか。本調査では建設業・製造業・運送業・警備業で働く300名を対象に、熱中症対策の義務化への対応を検討しました。
認知度と周知の実態
調査結果によると、熱中症対策の義務化を知っていると答えた人は72%に達していますが、約3割の回答者は「初めて知った」とのこと。つまり、周知が完全に行き届いているわけではありません。特に、「何もしていない」と回答した人が30%もおり、今後の周知方法や情報提供の重要性が改めて浮き彫りとなりました。
WBGT測定の実施状況
義務化の中核をなすのがWBGT(暑さ指数)の測定ですが、実施企業はわずか16.7%にとどまります。41.7%が「検討すらしていない」と回答しており、制度の根幹への対応が進んでいない現状が見受けられます。これに対して、企業は水分補給の徹底を最も多く挙げており、50.7%がこの対策を講じていますが、それに続く対応は低水準です。
緊急時の報告体制が不十分
熱中症が発生した際の報告体制について伺ったところ、「全員が理解している」と答えた企業は9.7%で、約9割が何らかの問題を抱えていることが判明しました。未整備の企業も17.0%に上り、危機対応が整っていない現実が浮かび上がります。このような状況では、万が一の際に迅速な対応ができないでしょう。
課題と業務負担
熱中症対策における課題としては、「コストがかかる」という回答が40.7%に上り、「運用が複雑」との回答も見られました。義務化により業務負担の増加を感じていると回答した方は42.4%に達しています。特に熱中症リスクが高い業種は既に対策を講じている場合が多く、負担を感じにくい傾向があります。
行政に対する期待
企業が行政や外部機関に求める支援として、61.7%が「補助金・助成制度の拡充」を挙げています。また、運用の具体的ガイドラインや法改正についての分かりやすい資料提供への期待も高まっています。企業が単に資金を求めているのではなく、実際に何をすべきかの指導を求めていることは、今後の対策に重要な情報です。
まとめ
今回の調査によって、熱中症対策の義務化においては認知度が高い反面、実施が進んでいない企業が多いことが明らかになりました。これは、金銭的な負担や実務ノウハウの不足といった障壁によるもので、企業はより安全で健康的な職場環境を構築するための根本的な見直しが求められます。労務SEARCHは今後もこうした情報提供を通じてサポートを続けていきたいと考えています。