新技術でSMA検出
2024-08-02 10:52:17

脊髄性筋萎縮症を迅速に検出する新技術が学術誌に掲載

脊髄性筋萎縮症(SMA)早期発見を可能にする新しいスクリーニングキット



近年、名古屋大学とCraif株式会社が協力して開発した、新生児の脊髄性筋萎縮症(SMA)を迅速に検出できるスクリーニングキットの研究成果が、米国の学術雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。この新技術は、スクリーニングが簡便で迅速に行えることが特徴で、幅広い医療現場での適用が期待されています。

脊髄性筋萎縮症(SMA)とは


脊髄性筋萎縮症は、SMN1遺伝子エクソン7の欠失によって引き起こされる神経筋疾患で、先天的に発症します。この疾患は運動発達を妨げ、重度の場合、呼吸機能にも影響を及ぼす危険性があります。早期診断と速やかな治療が患者の予後を改善することが多くの研究から明らかにされています。

従来のSMAスクリーニングテストの限界


これまでのSMAスクリーニングは、出生後の血液採取が必要で、SMN1とSMN2遺伝子の区別にも時間がかかるなど、一部の検査が複雑であったため、迅速な診断が難しいとされていました。これでは新生児にとって致命的な結果を招く可能性が高かったため、この問題を解決する手段が求められていました。

新たに開発されたスクリーニングキットの特長


Craifの新しいスクリーニングキットは、100以上の特異的なプライマーを用いてSMN1遺伝子を迅速に検出する仕組みになっています。具体的には、唾液を採取し、PCRを用いてDNAを増幅することで、最終的には1.5時間以内に検査結果を得ることができます。

この検査は、特殊な設備を必要とせず、産科クリニックなどの一般的な医療機関でも容易に実施できる点も大きな魅力です。検査手順もシンプルで、結果は目視で確認でき、陽性または陰性の二値判定が可能です。

研究成果の信頼性と実用性


本研究では、外来クリニックで採取したSMA患者と保因者の唾液検体の分析を行い、新たに開発したスクリーニングキットが高い精度を持つことを確認しました。すべてのSMA患者のサンプルからはSMN1の欠失が確認され、一方で健康なボランティアのサンプルでは遺伝子の存在が確認されました。これにより、このスクリーニングが実用に耐えることが検証されました。

今後の展望


Craifは、前向きな臨床試験を進めており、2025年以降の実用化を目指しています。また、SMA以外の遺伝性疾患に対する応用も計画されており、多くの疾患において早期発見につながることが期待されます。

SMAスクリーニング制度の変化


日本では、2023年11月にこども家庭庁が新生児マススクリーニング検査にSMAを追加する方針を固めており、今後は全国で公費による検査が実施されることが見込まれています。このスクリーニングキットは、その制度の実現とともに、より多くの新生児が早期に治療を受けられるようになることが期待されています。

Craifについて


Craif株式会社は、2018年に設立され、名古屋大学発のベンチャー企業です。尿などの簡単に採取できる体液から病気に関連した生体物質を精度高く検出する技術「NANO IP®︎」を持ち、がん診断をはじめとする疾患の早期発見に向けた研究を進めています。詳細は公式サイトでご確認ください。


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会社情報

会社名
Craif株式会社
住所
東京都文京区湯島2丁目25番7号本郷ITPオフィス5階
電話番号

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