6度目の重版!山岳遭難捜索のリアルに迫るノンフィクション
近年、登山ブームの高まりとともに、山岳遭難事故も増加傾向にあります。本書『「おかえり」と言える、その日まで 山岳遭難捜索の現場から』は、そんな山岳遭難の現場に密着した、衝撃的なノンフィクションです。著者は、警察や消防による捜索が打ち切られた後も、家族からの依頼を受け、行方不明者の捜索を行う山岳遭難捜索のプロフェッショナル。
本書では、著者がこれまで携わってきた6つの実例が詳細に描かれています。それぞれのケースで、著者は看護師としての経験と、まるで探偵のような鋭い洞察力を活かし、遭難者の足取りを丹念に追います。遭難現場の状況、ご遺族とのやり取り、そして発見に至るまでの過程が克明に綴られており、読者はまるでその場に居合わせたかのような臨場感を味わうことができます。
単なる事実に基づいた報告書ではない
本書は、単なる事実に基づいた報告書ではありません。各エピソードには、著者の深い共感と、遭難者とその家族への温かい思いが溢れています。特に印象的なのは、ご遺族への寄り添い方です。著者は、捜索活動だけでなく、ご遺族の心のケアにも細やかな配慮を払っており、その献身的な姿勢は読者の心を深く揺さぶります。
プロファイリングで解き明かす遭難の謎
本書の大きな特徴の一つは、著者が行う「プロファイリング」です。遭難者の行動パターンや性格、登山経験などを綿密に分析することで、行方不明になった理由や、最後に辿ったルートを推測していきます。このプロファイリングの手法は、読者にとっても大変興味深く、山岳遭難の謎解きを楽しむことができるでしょう。
6つのエピソードとコラムで構成
本書は、大きく分けて6つのエピソードで構成されています。それぞれのエピソードは、異なる山域、異なる状況下での遭難を描いており、読者は様々なケースを通して山岳遭難の多様性を知ることができます。さらに、各章にはコラムが挿入されており、捜索費用や保険、ご遺族の気持ちの変化など、山岳遭難に関する様々な情報を提供しています。これらのコラムは、遭難予防や早期発見に役立つ貴重な情報源となるでしょう。
低山でも起こりうる遭難の危険性
本書で描かれている遭難事例は、有名な高山だけでなく、身近な低山でも起こりうることを示しています。著者は、たとえ経験豊富な登山者であっても、予期せぬ事態に遭遇する可能性があることを繰り返し強調しています。本書を読めば、登山における安全意識の重要性を改めて認識できるでしょう。
山岳遭難捜索の現場を知る、そして学ぶ
本書『「おかえり」と言える、その日まで』は、山岳遭難捜索の現場をリアルに描き、その過酷さと尊さを伝えています。単なる遭難事故の報告書ではなく、山への畏敬の念と、生命の尊さを改めて考えさせられる一冊です。登山者だけでなく、山に関わるすべての人、そして多くの人々に読んでもらいたい、そんな力作です。著者の中村富士美氏は、山岳行方不明者遭難捜索活動を行う民間チームLiSS代表を務め、国際山岳看護師としての経験も活かし、ご遺族へのサポートも精力的に行っています。
本書を通じて、山岳遭難の現状や、その背景にある問題点について理解を深めることができ、登山を安全に楽しむためのヒントも得られるでしょう。