イトーキが提案する太陽光パネル再生プロジェクト
株式会社イトーキが、日立製作所とトクヤマと共同で、廃棄される太陽光パネルから回収した板ガラスを再利用したオフィス家具の開発に取り組んでいます。このプロジェクトは、サステナブルな社会の実現を目指すもので、アップサイクルによる新たな価値の創造が期待されています。
プロジェクトの背景
2030年代以降、日本国内では寿命を迎える太陽光パネルが年間最大50万トン程度廃棄される見込みです。この問題に対処するため、ヨーロッパを中心に太陽光パネルのリサイクルが義務化されており、より高付加価値な材料の再利用が求められています。しかし、現時点では板ガラスの再利用方法については粉砕し、別用途に使うことが主流です。
一方、イトーキ、日立、トクヤマの3社は、太陽光パネルから回収した板ガラスをそのまま再利用する新たな試みを行なっています。このプロジェクトでは、トクヤマの低温熱分解技術を用いて高品質な板ガラスを取り出し、日立の非破壊強度推定技術でガラスの品質を評価することで、再利用の実現に向けて安全性を確保しています。
アップサイクル技術の特徴
1. 高品質ガラスの回収
トクヤマが開発した低温熱分解技術により、使用済みの太陽光パネルからガラス、セル、インターコネクタを高品質に取り出せます。この技術は、NEDOとの共同研究を通じて進化しており、ガラスのリサイクル効率を向上させています。
2. 非破壊強度推定技術
日立が開発した技術により、ガラスの劣化要因である亀裂やアルカリ溶出の影響を評価できます。これにより、ガラスの強度を推定しアップサイクルが可能になります。安全性や耐久性を確保することで、利用者に安心して使用してもらえる製品を提供できるのです。
3. 再生材のデザイン
イトーキは、回収したガラスの特性を活かした会議ブースの試作品を制作しました。デザインでは、ガラスの凹凸を活かし、目隠し効果を持った意匠材として使用しています。これにより、回収ガラスを活かしたデザイン性の高い家具が実現しました。
環境への貢献
この取り組みにより、新たなガラスを製造する際と比較してCO₂の排出量を最大50%削減できると試算されています。これは、環境負荷を低減し、持続可能な社会の形成に寄与する重要な成果です。
今後の展望
今後、イトーキ、日立、トクヤマの3社は、取り組みをさらに拡大し、オフィス家具以外の建材分野やその他の領域での事業モデルを検討していきます。また、業界全体の協創や標準化を進め、資源循環型社会の実現を加速します。
この成果の一部は、2025年度資源・素材関係学協会合同秋季大会で発表予定です。サステナブルな製品開発がもたらす社会的意義について、多くの関心を集めることでしょう。
イトーキと日立、トクヤマについて
イトーキは1890年に設立され、オフィス環境のデザインや事業化を手掛けています。サステナブルな企業を目指し、環境の配慮を重視した製品開発にも注力しています。
日立製作所は、ITとOTを組み合わせた社会イノベーション事業を展開しており、持続可能な社会を目指す取り組みが特徴です。
トクヤマは化学素材に強みを持つ企業で、リサイクル技術の開発に取り組んでいます。これらの企業が共に働くことで、より持続可能な社会の実現が期待されます。