近年、境界知能という言葉が社会で耳にされることが増えてきましたが、その実態や背後にある生きづらさについて、実際の当事者からの声は少なかったのが現状です。そんな中、フォレスト出版から2024年9月20日に発売される『境界知能の僕が見つけた人生を楽しむコツ』は、実際に境界知能を持つ著者のなんばさんが、自らの経験を基に、日常生活で役立つヒントや方法を明らかにしています。
境界知能とは、知能指数(IQ)が70から85の範囲にある人々を指すもので、全人口の約14%にあたると言われています。しかし、多くの人が自分のIQを把握していないため、境界知能を持つ個人がその特性に悩むケースが少なくありません。本書では、そんな当事者がどのように自身の生きづらさを乗り越えているのか、具体的な生活のコツを紹介しています。
例えば、著者の提唱する「煮る」と「生」で料理を9割簡略化する自炊法や、洗濯機を使う手間を掛けるよりドラム式や乾燥機をフル活用する点が挙げられます。また、人間関係を整えるために「しないことリスト」を利用する方法や、失敗をポジティブに捉える「失敗の日」を設定するアイデアも取り上げています。
著者のなんばさんは、1991年に生まれ、当事者としての悩みを抱えてきた自身の体験を元に、境界知能の特性を持つ人々やその周囲の人々にも役立つ情報を広めています。彼は以前、正社員としての働き方を経験した後、さまざまな仕事に挑戦しましたが、生きづらさを感じ続け、多くの試行錯誤を経て、境界知能ならではのライフハックを見出しました。
本書では、具体的な日常のコツが多数紹介されており、「何がわからないかがわからないときの対処法」や「皿洗いをマインドフルネスとして楽しむ方法」など、多様なアプローチがされています。これらは単に境界知能にとどまらず、感情のコントロールやコミュニケーションに悩む全ての人にとっても参考になる内容です。
さらに、著者はSNSやYouTubeを通じて、境界知能についての情報発信を行い、相談事業も手掛けています。これによって、社会全体への認知を拡大することが試みられています。
本書は、単に境界知能の当事者に向けられたものだけではなく、周囲の家族や友人、職場の仲間など、多くの人が共感できる内容が詰まっています。「普通」であることが求められる社会の中で、いかに自分らしさを保ちながら生きていくかを考えさせられる一冊なのです。
著者の体験談を通じて、境界知能に対する理解を深め、生きづらさの解消を目指すための手助けとなることを期待しています。さらに、このような当事者の声が多くの人々に届くことで、境界知能に関するネガティブなイメージの払拭にもつながることでしょう。新刊を手に取り、ぜひその実践的な知恵を学び、自身の生活に役立てていただければと思います。