新たな技術の実証
栗田工業株式会社(クリタ)は、再生可能エネルギーの利用促進と環境負荷の軽減を目指して微生物燃料電池(MFC)の開発を進めてきました。2023年11月に、長崎県西海市で実施された実排水を用いた発電の実証試験で、一定の成果を得ることができたのです。この試験では、微生物が排水中の有機物を分解して得られる電力を利用し、電気機器を連続で稼働させることができることが確認されました。
微生物燃料電池とは?
微生物燃料電池は、排水中に存在する「発電菌」と呼ばれる微生物によって、従来は汚泥として処理されていた有機物を電子として放出し、電気エネルギーに変換する技術です。この仕組みにより、排水処理のプロセスでエネルギーを削減し、二酸化炭素の排出量を減少させることが期待されています。
実証試験の詳細
実証試験は、福岡県福岡市のニシム電子工業と共同で行われ、キャンプ場での実施となりました。ニシム電子工業の自己処理型水洗トイレ「TOWAILET」を使用し、トイレの排水を微生物燃料電池セルに供給。その結果、単三電池三本で動作するデジタル時計とLED電球60個で構成されたイルミネーションを稼働させることに成功しました。
この試験の結果、排水中の有機物除去量あたり0.6~0.8 Wh/g-CODCrの電気エネルギーを得られ、連続稼働に成功したことが大きな成果です。また、発電セルの性能も向上し、最大で550 W/m3の発電が可能となりました。
今後の展開
クリタでは、今回の実証試験での成功を基に、今後の展開を模索していくとしています。災害時の電源としての活用が見込まれるほか、工場などの排水処理用途でも実用化を目指した長期的な試験を計画しています。
持続可能な未来に向けて
環境問題が深刻化する中、栗田工業の取り組みは非常に意義深いものです。この技術が広がれば、様々な分野でのエネルギー供給が変革し、持続可能な社会の実現に一歩近づくでしょう。クリタグループは今後も「水」に関する新たな価値提供に努めていきます。