宇宙衛星の温度管理
2025-03-03 15:37:09

関西大学と新日本電工が実証した宇宙衛星用温度安定化技術の革新

超小型衛星「DENDEN-01」と温度安定化技術



関西大学が新日本電工株式会社と共同開発した無機系固-固相転移型潜熱蓄熱材(SSPCM)を用いた人工衛星用温度安定化デバイスが、宇宙での実証に成功しました。この技術は、超小型衛星「DENDEN-01」に搭載され、国際宇宙ステーション(ISS)からの放出後にその効果が確認されました。

実証の詳細



このデバイスは、 DENDEN-01が2023年12月9日にISSから放出された際に搭載されており、試験電波による通信を通じて、衛星のバッテリー温度が設計された下限を下回らず、適正な温度範囲が維持されたことが確認されました。これは、無機系SSPCMによる温度安定化効果の宇宙での実証としては初めての成功例です。

本デバイスは、DENDEN-01の内部に搭載された円筒形のリチウムイオン電池を温度管理します。実験中、衛星が日陰から日照に移行するとき、他の搭載機器は急激に温度が低下したにも関わらず、バッテリーはほぼ一定の温度を維持しました。この結果は、SSPCMが効果的に熱を蓄え、放熱を制御することで、バッテリーの温度変化を抑えたことを示しています。

DENDEN-01の概要



DENDEN-01は、2021年に日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)によるプログラムに選ばれた超小型衛星で、学術研究や人材育成を目的として開発されました。この衛星は、固-固相転移型潜熱蓄熱材を活用した電源温度安定装置を含む複数のエネルギー技術の実証を行います。

小型衛星の開発は近年急速に進んでおり、その中でも「キューブサット」と呼ばれる1U(10×10×10cm)の標準化された衛星構造は非常に人気です。しかし、超小型衛星には電力や重量、サイズに制約があり、急激な温度変化に弱いという課題があります。特に、搭載機器である電源は、低温環境にさらされると性能が低下し、障害を引き起こす可能性があります。

将来の展望



関西大学と新日本電工は、SSPCMの開発を通じて、宇宙環境におけるバッテリーの温度安定化を実現しました。これにより、超小型衛星や探査機における電源の信頼性向上が期待されています。今後の「DENDEN-01」の運用を進めることで、さらにSSPCMの効果を評価し、次世代の超小型衛星技術の確立を目指すことになります。

この実証によって得られた成果は、宇宙技術の発展に貢献し、さまざまな機器の温度管理方法としての実用化に向けた重要な一歩となるでしょう。関西大学と新日本電工の共同研究は、今後ますます注目を集めることでしょう。


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会社情報

会社名
学校法人関西大学
住所
大阪府吹田市山手町3丁目3番35号
電話番号
06-6368-0007

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