住友理工とギンレイラボ、生体模倣システムのエントリーモデルを販売開始
住友理工株式会社と株式会社ギンレイラボは、共同開発した生体模倣システム(MPS:Microphysiological Systems)のエントリーモデル2製品の販売を11月下旬より開始すると発表しました。
このMPSは、医薬品などの効能確認や安全性評価に用いられる革新的なシステムです。従来の試験方法では捉えられなかった、生体内の複雑な反応を再現することで、より正確な評価を可能にします。
今回販売開始となるのは、研究機関から製薬企業まで、幅広いユーザーが基礎実験ツールとして利用できる「フロー培養デバイス」と「3D培養デバイス」の2製品です。
フロー培養デバイス:生体内の血流を再現
生体では、血液が臓器や細胞に酸素や栄養素を供給し、情報や物質の交換を担っています。フロー培養デバイスは、この血流を模倣するために、培養液の精密な制御を実現しています。
住友理工のコア技術である「流体制御技術」により、ギンレイラボの水平型共培養容器に最適化された培養液フローが設計されました。一方向送液だけでなく、複数の培地を同時に流すことも可能で、既存の装置と組み合わせることで簡単に実験が行えます。
さらに、容器間にフィルターを配置することで、細胞間の相互作用を精密に制御し、細胞が混ざることなく観察できます。この機能は、脳と腸の相互作用研究や、エクソソーム(細胞外小胞)の機能解明など、様々な研究分野での応用が期待されます。
3D培養デバイス:立体的な細胞培養を実現
ヒトの臓器は三次元構造をしているため、従来の平面的な細胞培養(2D培養)では、生体内の環境を正確に再現することが困難でした。3D培養デバイスは、細胞の凝集塊であるスフェロイドやオルガノイドを用いた三次元培養を実現します。
このデバイスは、底面にU字型の微細なウェル(くぼみ)が形成された培養プレートで、特殊なコーティングにより、細胞を播種するだけで簡単にスフェロイドを形成できます。薬剤のスクリーニングや、規則的に配列されたスフェロイドアレイの作成など、幅広い用途に対応できます。また、デバイス底面のデザインを変更することで、神経細胞の評価など、用途に合わせたカスタマイズも可能です。
ギンレイラボとの協働と今後の展望
住友理工とギンレイラボは2022年からMPSの開発を共同で進めており、2023年にはカスタムサービスを開始、製薬・化粧品メーカーとの協働プロジェクトも進行中です。2024年には海外展開も予定しており、抗がん剤評価モデルや脳腸相関モデルなど、様々なアプリケーションの開発と創薬支援ビジネスの拡大を目指しています。
ギンレイラボは、金沢医科大学発のスタートアップ企業で、多種類の細胞を同時に培養・観察できる独自の水平接続型共培養容器「NICO®-1」「UniWellsTM」を開発・販売しています。これらの製品は、国内外の理化学研究機器販売会社を通じて販売され、高い評価を得ています。
まとめ
住友理工とギンレイラボが共同開発した生体模倣システムのエントリーモデルは、医薬品開発や基礎研究に新たな可能性をもたらす画期的な技術です。このシステムが、医療分野の進歩に貢献することが期待されます。