ディーゼル機関におけるPM計測の新たな知見
2023年10月24日、東京海洋大学にて開催される日本マリンエンジニアリング学会第94回学術講演会において、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(NMRI)の大橋厚人上席研究員が、ディーゼル機関におけるアンモニアと軽油の混焼時における粒子状物質(PM)の計測結果を発表します。これは、同分野において世界初の試みであり、環境への影響に関する重要なデータとなります。
アンモニア混焼の背景
近年、地球温暖化対策の一環として、燃料における炭素排出削減が求められています。特に、船舶分野では、従来のディーゼル燃料に代わり、アンモニア(NH3)や水素が注目されています。これらの代替燃料は、温室効果ガス(GHG)の削減につながる可能性があるため、研究が進められています。
NMRIでは、これまでに4ストローク実験用単気筒ディーゼル機関を用いて、NH3と軽油を混焼させる実験を行い、GHG削減効果を実証してきました。今回の発表では、この技術による新たな風が吹く中、PMについての新しい知見が示されることになります。
PM計測の意義
PMは、健康への影響が懸念される物質であり、その成分にはブラックカーボン(BC)や有機炭素、無機塩類が含まれています。これまで、NH3混焼時のPMに関する計測は行われたことがなく、その影響を探ることは大気環境保全にとって重要なテーマとなります。特に、GHG削減技術が他の有害物質を増加させないことを確認することが求められています。
今回の実験において、NH3混焼率を40%および70%に設定した場合のPM排出量を計測しました。その結果、40%混焼時にはBCがほぼ排出されず、健康被害をもたらすPMは、混焼率70%では軽油のみの燃焼時の約1/3程度に減少することがわかりました。これにより、アンモニア混焼の効果が明らかになりつつあります。
今後の展望
本発表は、今後の地球温暖化対策及び持続可能なエネルギー政策における貴重なデータとなり、船舶業界での技術開発をさらに進めるきっかけになるでしょう。今後も、同研究所はGHG削減技術とPM計測の研究を続け、環境に優しい航行の実現を目指していきます。
今後も新たな技術革新が期待され、アンモニア混焼による利点が広がることが予想されます。この先どのような研究が進展するのか、注目が集ります。
興味を持たれる方は、学術講演会に参加し、最新の成果を直接聞いてみることをお勧めします。こちらから参加申し込みが可能です:
日本マリンエンジニアリング学会(締切:10月7日)