がん細胞の新発見
2022-11-04 09:17:38
がん細胞の新たなメカニズムを解明、腹膜播種治療への期待
がん細胞の新しいメカニズム解明
最近の研究により、難治性のがんである腹膜播種の転移機構が新たに明らかになりました。この研究は、がん細胞にRGBマーキングを用いて七色に光る細胞を作成し、それをマウスの腹腔内に移植することで行われました。
腹膜播種とは
腹膜播種とは、がん細胞が腹腔内で増殖し、腹膜に接着して広がる転移の様式を指します。進行した胃がん、卵巣がん、膵臓がん、大腸がんなどで起こり、患者の生存率低下に大きく寄与していますが、現在有効な治療法は限られています。そのため、腹膜播種の機序を解明し、新たな治療法を開発することが求められています。
RGBマーキングの手法
研究チームは、RGBマーキングと呼ばれる技術を用い、がん細胞に赤・緑・青の蛍光タンパク質を導入しました。これにより、個々の細胞を異なる色でラベリングし、それぞれの腫瘍を観察した結果、腫瘍は一色ではなく複数の蛍光色を示しており、複数のがん細胞集団が形成されていることがわかりました。
フィブリン形成とがん細胞の集団化
研究では、がん細胞が腹腔内で集団を形成し、フィブリンと呼ばれるタンパク質がそれらの細胞をくっつける役割を果たしていることが確認されました。このフィブリンは、がん細胞の組織因子によって血液凝固系が活性化されて形成され、腫瘍が腹膜に接着するのを助けることが判明しました。
実験結果
がん細胞の組織因子をノックアウトした実験では、フィブリンによるクラスター形成が抑制され、腹膜播種も顕著に減少しました。これにより、がん細胞が集団を形成する過程が病変の進展に深く関与していることが示されました。
今後の展望と意義
この研究成果は、腹膜播種の腫瘍が多数の細胞集団から成ることを示した初めてのものであり、血液凝固系のメカニズムが腹膜播種に重要であることがわかりました。今後は分子標的治療法の開発が期待され、血栓症治療で使用される抗凝固薬が腹膜播種の治療薬として効果を示す可能性もあります。そのため、さらなる研究を進め、治療効果や副作用について検討を重ねることが重要です。
この研究は、がん細胞の新たな特性を明らかにし、治療法の探索に新しい道を示す意義深い成果となるでしょう。今後の研究が多くの患者に希望をもたらすことが期待されます。
会社情報
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公益財団法人 佐々木研究所
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