千葉工業大学の成層圏微生物捕獲実験が成功
千葉工業大学惑星探査研究センター(以下、PERC)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力し、地球大気の成層圏における微生物採取の実験“Biopauseプロジェクト”を進行中です。成層圏とは、地表から約11km~50kmの高度に位置する大気の一部分であり、この場所に生息する微生物の分布は、我々が「biopause」と呼ぶ地球の生物圏の上限についての理解に大きな役割を果たします。この領域の微生物の存在やその往来が、地球と宇宙の間にどのようなつながりがあるのかを探る手がかりとなるのです。
Biopauseプロジェクトの背景と目的
このプロジェクトは、2016年以降、これまでに4回の大気球実験を実施してきました。しかし、これまでの実験では、着水後に微生物採取装置が海水に浸水する問題に直面していました。この問題を解決するために、新型の微生物採取装置を開発し、機能の向上を目指しています。
新型採取装置の実証実験
先月、PERCの研究チームは新型の成層圏微生物採取装置を搭載した大気球の実証実験を行いました。この実験は、北海道広尾郡大樹町にある大樹航空宇宙実験場から、JAXA宇宙科学研究所が提供した大気球を利用して実施されました。
実験は8月3日午前4時50分に開始され、千葉工業大学が開発した新しい採取装置はスムーズに作動しました。大気は徐々に高度を上げ、微生物の採取が期待される成層圏に到達。やがて、装置は地上に無事に回収され、実験の成功が確認されました。
プロジェクトの進展と今後の展望
今回の成功は、PERCの目指す地球生物圏の上端、すなわち“biopause”についての観測的な確認に向けた大きな前進となります。今後は、成層圏から対流圏上部での微生物の高度分布を観測するため、今回の実証結果を生かして、複数の採取装置を並行して搭載した大気球実験を計画しています。具体的な実施計画も今後進められる見込みです。
このように、千葉工業大学とJAXAの協力により、地球と宇宙をつなぐ微生物の謎を解き明かすための技術的な進展が続いています。私たちの知らない成層圏の微生物世界が日々、明らかにされていくことでしょう。今後の成果にも大いに期待が寄せられています。