世界初のルチル型GeO2によるショットキーバリアダイオードの実現
はじめに
電子機器や電気自動車のエネルギー変換で鍵を握るパワー半導体技術。新たにPatentix株式会社が発表したのは、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)によるショットキーバリアダイオードの開発です。この技術は単なる半導体デバイスの革新にとどまらず、私たちの脱炭素社会実現への道を切り開くものと期待されています。
現状の課題
現在、パワー半導体の主流はシリコン(Si)ですが、バンドギャップが1.12eVと物理的な限界に達しました。加えて、SiCやGaNといった新素材の登場は、省エネ効果を向上させるものの、環境負荷の削減に向けたさらなる技術革新が求められています。特に、バンドギャップが4.6eVであるr-GeO2は、SiCを上回る省エネ性能が期待できるため、注目されています。さらに、酸化ガリウム(Ga2O3)との比較で、r-GeO2のP型発現特性も優れており、幅広いデバイス応用が見込まれています。
成果の詳細
Patentixは、r-GeO2を新たな半導体材料として位置づけ、ドナー型不純物を導入し、N+層およびN-層のr-GeO2結晶を成膜する技術を開発。この過程で、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)と協力し、世界初のショットキーバリアダイオードの動作確認に至りました。具体的には、絶縁性のTiO2基板上にN+層を形成し、その上にN-層を追加、最終的にNIMSによってエッチング処理を行い、電極を形成することでSBDを完成させました。
重要な特性評価
評価の結果、試作されたr-GeO2 SBDは、ダイオードとしての動作を確認しました。このデバイスは7桁のON/OFF比を達成し、整流特性においても優れた性能を示しました。また、容量電圧測定を通して、N-層の不純物濃度が約1×1017[cm-3]であることが確認され、この成果は、n型およびp型層を持つ半導体デバイスの開発の可能性を示唆しています。
将来の展望
Patentixは、今回の成果を基にr-GeO2を用いた半導体デバイスの開発をさらに進め、特に縦型構造のショットキーバリアダイオードの実現を目指しています。また、結晶膜の品質向上やP型半導体の実現にも引き続き取り組む計画です。これらの技術革新が進むことで、脱炭素社会に寄与する新しいエネルギー効率の高いデバイスの普及が期待されます。
結論
r-GeO2を用いたショットキーバリアダイオードの成功は、半導体技術においての革新であり、環境問題解決に向けた重要なステップです。Patentix株式会社は、今後もこの分野での先駆者としての役割を担い、持続可能な社会の構築を目指していくことでしょう。