超電導き電システムの営業実証試験が始まる
公益財団法人鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は、中央本線の日野駅と豊田駅の間で超電導き電システムによる営業実証試験をいよいよ開始します。このプロジェクトは、長年にわたる研究成果を実際の鉄道運行に生かす重要な試みです。
1. 営業線での試験の概要
鉄道総研は2007年から超電導き電システムの開発に取り組んできました。これまでも内部での車両走行試験や、超電導システムを設置した実験場での送電テストを段階的に実施してきました。これにより、システムの電圧降下抑制などの機能を確認し、営業運行に適した改良を続けています。
試験開始に伴い、2025年3月からは中央本線の下り線に超電導き電システムを接続し、日野駅から八王子方面へ向かう営業列車に必要な電力を供給します。このシステムは、営業列車の走行に必要な電力を供給し、さらにはブレーキシステムから得られる回生エネルギーの他の列車への供給につなげることを目指しています。
2. 超電導き電システムの仕組み
直流電気鉄道は3000V以下の比較的低い電圧で運行されるため、構造物との距離を短縮でき、特に都市圏の地下鉄や通勤路線でよく採用されています。しかし、必要な電流が多いため、電圧降下が大きな課題とされていました。
超電導き電システムは、この課題に対処するために設計されたもので、一定の温度以下で電気抵抗がゼロになる超電導材料を用いたケーブルと冷却装置で構成されています。これにより、電力の損失を抑えつつ、車両に電力を供給することが可能です。また、電圧降下を抑制することで、将来的には変電所の集約化や回生エネルギーの有効活用が期待されています。
研究の背景と支援
この研究は、国土交通省の技術開発費補助金や、科学技術振興機構のプログラムなどから支援を受けて実施されています。超電導き電システムの開発は、鉄道業界のエネルギー効率を大きく向上させる可能性を秘めており、今後の展開から目が離せません。
まとめ
超電導き電システムの営業実証試験は、日本の鉄道技術の進化の一環であり、電力供給のより効率的なシステムへのシフトを象徴しています。この試験により、鉄道の運行効率やエネルギー利用の革新が期待されることから、今後の成果が非常に楽しみです。