AIによる行政審査の実証実験について
福岡県の須恵町がトヨクモクラウドコネクト株式会社(TCC)と連携し、申請補助AIの実証実験を行いました。この実験の目的は、AIがどの程度行政業務の審査プロセスを自動化できるかの検証です。最近公開されたレポートには、AIが実施した自己確認業務の結果が詳細に示されています。
実証実験の概要
この実験では、実際の給付金申請データを用いてAIの精度を確認しました。AIが担当するのは、最終判断ではなく、事前審査、つまり一次審査に入る前の準備です。AIの活用により、行政業務の時間的なロスを削減できることが期待されており、その効果が実証されました。
審査結果の詳細
実験の結果、AIが行った441件の本人確認の事前審査のうち、431件については人間の確認でも「問題なし」と判断される結果が出ました。これにより、AIの事前審査は実務において利用可能な精度に達していることが確認されました。特に口座確認の事前審査では、434件が問題ないとされ、より高い精度を示しました。
ただし、全体の中でAIによる事前審査と人間の判断が一致しなかった10件については、さらなる精度向上が求められています。この点においても、AIによる判断が最終的な決定に影響を与えることはないため、安心して活用できる状況が整っています。
住民の申請状況
驚くべきことに、今回の実証実験で分析されたオンライン申請データによれば、申請のうち開庁時間内に行われたものは36.4%(172件)で、残りの63.6%(301件)は開庁時間外に行われていました。この結果から、住民の多くは夜間や休日に申請を行っていることが明らかになりました。
これまでのシステムでは、開庁時間外の申請は次回の開庁日まで待機していたため、審査が遅れることが避けられませんでした。しかし、AIを活用することで、これらの申請も即座に事前審査を実施でき、不備があった場合にはその場で申請者に通知されます。その結果、夜間に申請された案件が翌朝にはすでに修正され、行政運営のスピードが向上します。
AIの実運用に向けた期待
この実証実験のレポートでは、AIの自動化可能な領域や、AIがエスカレーションした領域、人間による確認の正誤率などが公開されています。AIによる審査業務の効率化は、特に多くの申請が予想される自治体において目覚ましい効果を発揮するとされています。
須恵町の税務課の宮原さんは、今回の試みによりAIの事前チェック精度が高く、多くの自治体に有益であると評価しました。一方、サイボウズとトヨクモの両社も、この試みを強く支持しており、今後の自治体業務やサービス向上に期待を寄せています。さまざまなステークホルダーが関与し、新たな運営モデルが実現する中で、AI技術がどのように社会に貢献するかが注目です。
結論
トヨクモクラウドコネクト株式会社は、今後も自治体業務の効率化や住民サービス向上に向けて技術的な支援を続けるとしています。AIの導入は、ただのトレンドではなく、持続的な行政サービスの向上を担保するための重要な要素となるでしょう。