国民の身体活動量の実態を明らかにする大規模調査:運動・スポーツの実施が健康寿命延伸のカギに?
笹川スポーツ財団と明治安田厚生事業団が共同で実施した「活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査」の報告書が発行されました。本調査は、仕事や移動など日常生活における身体活動だけでなく、余暇時間に行われるスポーツを含め、国民の身体活動量を客観的に測定することを目的としています。
2024年1月に厚生労働省が策定した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、健康寿命延伸のために具体的な身体活動量の目標が示されましたが、実際の国民の身体活動量に関する全国規模の客観的なデータは不足していました。この課題を解決するため、2023年10月から11月にかけて、首都圏・中京圏・近畿圏の13都府県在住の成人650人を対象に、活動量計を用いた国内初の大規模調査が行われました。
調査の結果、厚生労働省が推奨する身体活動量を達成している人は全体の49.5%にとどまり、特に女性や若い世代の達成率が低いことがわかりました。一方で、運動・スポーツを実施している人のほうが、推奨身体活動量を達成している割合が高いという結果も得られました。このことから、健康寿命の延伸には、運動・スポーツの習慣化が重要であることが示唆されます。
調査結果のポイント
厚生労働省の推奨身体活動量の達成率は49.5%、高齢者で達成率が高い
推奨身体活動量の達成率は運動・スポーツ実施者で69.1%と、非実施者の41.8%より高い
推奨身体活動量の達成者と非達成者で、余暇時間に差はみられなかった
今後の展望
本調査では、全国規模で成人の身体活動量を把握し、スポーツ実施や健康指標との関係性を検証することで、スポーツによる健康寿命の延伸を目指すための知見や政策形成に資する情報を発信していきます。今年度は対象者を全国200地点、5,400人に拡大した調査を実施しており、今後さらに詳細なデータ分析を行う予定です。
研究担当者コメント
明治安田厚生事業団体力医学研究所研究員 川上 諒子氏
>今回の調査結果より、スポーツ実施者の方が推奨身体活動量の達成率が高い状況が垣間見えたことからも、スポーツ実施の重要性が見て取れました。また新たな知見が得られた一方で、有効回答率の低迷という課題も残りました。今後は、政策への貢献も視野に入れて、国を代表する身体活動の実態調査の位置づけを目指し、全国への調査範囲拡大とともに、回収率向上の工夫に努めて参ります。
笹川スポーツ財団シニア政策オフィサー 松下 由季氏
>本調査の客観的な身体活動量のデータから、生活活動全般における身体活動量は運動・スポーツの実施者が非実施者に比べて多い傾向にあることがわかりました。また、余暇時間の多寡と推奨身体活動量の達成との関連はみえなかったことから、仕事や移動などの時間における身体活動の多い人や、余暇時間の中で運動・スポーツを実施している人が推奨身体活動量を達成している可能性が示唆されます。身体的な健康づくりのためには推奨身体活動量の達成が不可欠ですが、さらなるQOLの向上を目指すには、余暇時間に運動・スポーツを実施することが重要とされており、そのための施策を講じる必要があります。
活動量計を用いた調査
本調査では、三軸加速度センサーが入った活動量計を用いて、身体活動を客観的に測定しました。対象者は休日を含めた1週間、活動量計を装着し、身体活動量や歩数、座位時間を測定しました。
今後の展開
今後は、全国規模でのデータ収集と分析を通して、より精度の高い情報発信を行い、国民の健康増進と健康寿命の延伸に貢献していく予定です。
関連情報
笹川スポーツ財団:
https://www.ssf.or.jp/
明治安田厚生事業団: https://www.my-zaidan.or.jp/
調査結果報告書:
https://www.ssf.or.jp/thinktank/health_wellbeing/my-zaidan2023_3.html