尿中エクソソームの高精度解析による早期がん検知
東京都文京区に本社を構えるCraif株式会社の技術顧問である安井隆雄教授(東京科学大学生命理工学院)は、尿中エクソソームを解析することで早期がんを検出する新たな技術を発表しました。この研究は、共同研究者として名古屋大学や東京大学、大阪大学の教授らが名を連ね、2024年10月18日付の学術雑誌「Analytical Chemistry」に掲載されました。
研究の背景と目的
現代医学において、がんの早期発見は治療の成功において極めて重要です。特に肺がんや脳腫瘍は、早期に発見することで生存率が大きく改善します。これまで、尿中のマイクロRNAからがんを検知する技術は限界がありましたが、安井教授らは新たにナノワイヤ技術を用いた解析法を開発しました。
尿中エクソソームの解析手法
この研究では、尿中に存在するエクソソームを効率的に捕集するために、1次元のナノ構造体であるナノワイヤを使用しました。この技術により、従来の検査法では確認されていなかった2000種類以上のマイクロRNAが尿中に存在することを明らかにしました。
研究成果の重要性
研究チームは、100人のがん患者と100人の非がん患者から抽出した尿中マイクロRNAデータを用い、機械学習を活用したアンサンブルモデルを構築しました。その結果、感度98.2%、特異度96.5%という高い精度で、がん患者と非がん患者を効果的に識別することができることが示されました。
早期がん検知の可能性
さらに、この技術を用いて早期がん患者(ステージI)の識別が可能であることが確認され、AUROCが0.987を記録しました。この成果は、肺がんや脳腫瘍だけでなく、他のさまざまながんの早期発見にも応用できる可能性を示唆しています。
今後の展望
今回の研究成果は、尿中のエクソソームに関する新しい知見をもたらしました。がんの種類に応じたマイクロRNAの変化も明らかになっており、この情報を活用することで、今後はより多くのがん種に対して早期発見技術が開発されることが期待されます。優れた検査技術が確立されることで、患者の治療成績向上へ繋がることを目的としています。
付記
この研究は、日本医療研究開発機構(AMED)や科学技術振興機構(JST)などの助成を受けて実施されました。技術革新により、今後の医療分野での進展を促進させることが期待されます。
Craif株式会社について
Craifは、2018年に設立された名古屋大学発のベンチャー企業です。トライアル基盤技術「NANO IP®︎」を使用し、尿を含む体液から病気に関連する生体物質を高精度で検出することに取り組んでいます。がん早期発見の新しいアプローチとして期待されており、今後の技術開発に注目が集まります。