障害を抱える看護学生と看護職の物語
認定NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパンが発表した新プロジェクト「障害ナースの語り」は、障害や病気を持ちながら看護を学び、働く人々の貴重なインタビューを収録しています。2025年4月の公開を目指し、看護職を志す障害者たちの体験を記録したこのプロジェクトは、医療現場における障害者に対する理解を深める重要な取り組みとなっています。
プロジェクトの背景
このプロジェクトは、障害や病気を抱える看護学生や看護職者がどのようにして看護の道を歩み、またそれをどのように実現しているのかを語る場所を提供しています。これまでの先行プロジェクト「障害学生の語り」では、7名の看護専攻学生のインタビューが行われましたが、今回は看護職者13名へのインタビューが新たに加わりました。
語りの内容とテーマ
収録された内容は多岐にわたり、以下のようなテーマに分けられています:
- - 看護職を目指した理由
- - 学校及び職場での障害の開示
- - 学生時代の環境調整や配慮
- - 障害を持ちながら看護を学ぶ体験
- - 就職活動
- - 職場での環境調整や配慮
これらの語りを通じて、障害がありますが看護職を続ける彼らの強い決意や実体験が伝えられ、同じ境遇の人々や医療関係者にとっての大きな支えとなるでしょう。
インタビューの一部抜粋
実際に担い手となる看護職者たちの声も興味深いものです。一例として、ある60代の肢体不自由を抱える看護職者は、入院中に看護を学び、その経験を仕事に生かしたいと主治医に訴えました。そんな彼女の熱意が功を奏し、車椅子での職場復帰が実現したエピソードが紹介されています。
また、ある40代の発達障害を持つ看護職者は、職場での自分に対する過小評価を語っています。障害についての理解がまだ偏っている現場の状況が浮き彫りになります。一方で、50代の内部障害を抱える看護職者は、仕事に戻る不安があったが、半日勤務から始めて徐々にシフトを元に戻していった経験を語り、希望の光を見出しています。
プロジェクト責任者の思い
このプロジェクトを発起したのは、元看護学生であり現在のプロジェクト責任者である瀬戸山陽子氏です。彼女は障害のある医療者の重要性を強調し、障害があっても医療の現場で貢献できるというメッセージを発信しています。瀬戸山氏は、自身も脳外科手術によって歩行障害を抱えた一人の看護ナースであり、彼女の体験が多くの障害を持つ看護師の希望となることを願っています。
反響と期待
既に、看護系の大学教員からはこのプロジェクトを通じて、学生の心の健康にも配慮する重要性を感じ取ったという声が寄せられています。また、病院の看護管理者からも、現場での環境整備に向けた意欲が高まったという意見も聞かれています。
このように「障害ナースの語り」は、単に個々の物語を記録するだけでなく、医療現場全体に変化を促す力を持っています。
おわりに
今後も、健康と病いの語りディペックス・ジャパンは、様々な病気や障害と向き合う人々の声を大切にし、彼らの経験が多くの人々にとっての導きとなることをテーマに活動を続けていきます。病気や障害に対する理解が深まることで、よりインクルーシブな医療が実現することを期待しています。