大阪大学が国産初の生体分子シークエンサーを発表
2024年10月1日、大阪大学の産業科学研究所にて、待望の国産生体分子シークエンサーのプロトタイプが発表されました。谷口正輝教授と大城敬人准教授が、その開発成果を記者会見で披露しました。この新技術は、がん治療に不可欠な遺伝子検査を支え、さらにはペプチド創薬への応用も期待されています。
生体分子シークエンサーとは
生体分子シークエンサーは、遺伝情報を解読する装置であり、特にがんの診断や治療において非常に重要な役割を果たします。この機器は、個々のゲノム(DNA)だけでなく、遺伝子の発現に関する情報(RNAやペプチド)も読み取ることが可能です。この情報は、個別化医療や微生物を利用したバイオものづくり、さらには農業分野の技術革新にとってかけがえのないものであり、その社会的意義は計り知れません。
海外メーカーへの依存からの脱却
現在、日本の生体分子シークエンサー市場はほとんどが海外メーカーに依存しています。この状況は、国内の新たながん罹患者が年間100万人に達する中で、保険適用の遺伝子検査を増加させ、国費の流出を招いています。そのため、日本における生体分子シークエンサーの国産化は喫緊の課題であり、この新技術の開発は国家レベルの重要性を持っています。
16年にわたる研究の成果
生体分子シークエンサーの開発は、大阪大学の研究チームが、16年以上にわたり進めてきました。しかし、実用化に向けた大きな課題として、計測チップと計測装置の開発がありました。今回のプロトタイプ機の開発は、国内最大手の受託検査会社であるH.U.グループ中央研究所との共同研究により実現されました。
今後の展望
今回開発されたシークエンサーは、今後AI技術との融合を図り、より高速かつ高精度な診断法の開発へとつながる見込みです。特に、国際競争がますます激化するバイオ分野において、この技術は研究開発の推進だけでなく、感染症の流行やバイオセキュリティリスクに対する迅速な対応を可能にするものと期待されています。
研究の意義と社会的影響
国産生体分子シークエンサーの誕生は、多額の国費が流出することを防ぎ、先進医療を持続的に提供するための重要な突破口となります。この技術により、遺伝情報の解析が迅速かつ大量に行えるようになり、医療やAIだけでなく、生命科学の分野にも革命をもたらすことが期待されます。さらに、量子現象を用いたシークエンサーは、量子コンピュータの重要な応用技術とされる可能性も秘めています。
展示会での発表
このプロトタイプ機は、10月9日から11日までパシフィコ横浜で開催される展示会『BioJapan 2024』でも公開される予定です。
今後の日本における生体分子シークエンサーの研究開発から目が離せません。