アジア太平洋地域における働く意識の変化
2023年5月14日、ランスタッド株式会社は「2025 ワークモニター アジア太平洋版」の日本語版を公開しました。このレポートでは、アジア太平洋(APAC)地域における働き手の意識や期待が詳細に示されており、企業の人材獲得や従業員エンゲージメントに向けた重要な情報が提供されています。
仕事の目的と世代間ギャップ
調査によると、特に日本では、驚くべきことに64%の労働者が、お金に困っていなくても仕事を続ける意向があると答えました。これは日本の働き手が、金銭的な対価以上に仕事に求めるものが大きいことを示しています。自身の価値観やライフスタイルに合った職業を選び、仕事を通じて自己実現を図る姿勢が顕著です。
特にZ世代においては、51%が「お金がなくなれば働かない」と答えており、団塊の世代(38%)と比較しても顕著に仕事の目的をお金以外に求めていることが浮き彫りになります。これにより、Z世代は伝統的な企業文化に対して魅力を感じず、より社会貢献を重視していることが分かります。
日本における帰属意識の低下
APAC全体では、職場における帰属意識への関心が高まっていますが、日本ではその傾向が異なります。職場に良い友人がいれば収入が減っても問題ないと答える人が43%いるのに対し、日本では19%と低いことは、コミュニティ意識や帰属感が不足している背景を映し出しています。職場で「仕事は仕事」と割り切る傾向が強いことが、職場関係の希薄さにつながっているのかもしれません。
さらに、上司や同僚への信頼度もAPAC全体と比較して低い傾向にあります。63%が職場で自分自身を隠していると感じており、これは日本の労働文化が個人の自由な表現を妨げていることを示唆しています。それでも、3割以上は帰属意識を感じられなければ仕事を辞める可能性があると回答しています。
スキリングとAI学習の重要性
さらに、APACの労働者は学習と能力開発の機会を強く求めており、特にAI関連スキルの習得に関心を寄せる人が多く存在します。一方、日本はスキリングの機会やAI学習に関する意識が遅れていることが調査から明らかになっています。日本でAIを含む最新技術を使う準備が整っていると答えたのは40%のみであり、APAC全体では73%、世界では71%の人々が自信を持っているという調査結果があります。
日本ではAIトレーニングをL&Dで最も重要視する人の割合も、APACの27%や世界平均の22%に対しわずか16%と低い値となっており、特に労働者のスキル不足が懸念されます。また、過去6ヶ月間にL&Dを受けた割合も日本は最低で、これは職場環境の改善が急務であることを示しています。
結論
ランスタッドの「ワークモニター2025」は、日本のみならずアジア太平洋地域における働き手の意識と期待の変化を明らかにしました。変化する労働環境の中で、多様性や学習機会の提供が求められる今、企業は職場での帰属意識を育て、従業員がより良い働き方を実現できるような環境整備が必要です。
この調査結果を元に、COVID-19以降の新たな労働意識を理解し、企業戦略を見直す機会とすることが重要です。私たちの働き方、そして人生の質は、今後ますます変化していくことでしょう。