理化学研究所「富岳」のネットワーク刷新プロジェクト
理化学研究所の計算科学研究センター(R-CCS)が運用するスーパーコンピュータ「富岳」は、世界屈指の計算性能を誇り、様々な学術研究や産業利用に活用されています。この度、「富岳」が新たな高速ネットワークに刷新され、さらにその性能を引き出す体制が整いました。プロジェクトを支援したのは、東京エレクトロンデバイス株式会社(TED)です。
ネットワーク基盤刷新の背景
近年、膨大なデータ量を処理する需要が急速に増加しています。この流れに対応するため、2022年4月から導入された新しい学術情報ネットワーク「SINET6」に基づき、「富岳」の基盤を刷新するプロジェクトが開始されました。目指すは、より多様な研究利用に適した、安定したデータ通信の実現です。
課題と解決策
1. 帯域幅の不足
従来のネットワーク「SINET5」では100Gbpsの専用線が利用され、ピーク時には帯域が不足する問題がありました。特に、大容量データを利用するハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)においては、この制約は大きな障害となっていました。これを解決するため、400Gbps以上のネットワーク速度が求められました。
2. 可用性の確保
以前のネットワークは神戸データセンターに限定されていたため、障害時やメンテナンス時のリスクが非常に高く、全体が停止してしまう可能性がありました。これを改善するため、データセンターの冗長化を行い、可用性の向上が目指されました。さらに、ネットワークの設計や運用を外部から自社に切り替えることで、迅速なニーズ対応を実現しました。
提供されたソリューション
TEDは、以下の三つの製品を用いてR-CCSの新ネットワーク構築を支援しました:
- - Arista 7280R3シリーズスイッチ: 400Gbpsの超高速接続を実現し、シンプルでコスト効率の高いネットワークを構成。
- - FortiGate 4800Fファイアウォール: ネイティブで400Gbpsを搭載したセキュリティを提供し、ボトルネックを回避。
- - CloudVisionテレメトリ監視ソフト: リアルタイムのネットワーク状況を把握できる監視機能を提供。
ネットワーク刷新の効果
新しいネットワークでは、「富岳」とSINET神戸データセンターを400Gbpsの専用線で接続し、さらにSINET大阪データセンターとの接続も800Gbpsで行われています。これにより、計3回線、合計1.2Tbpsの帯域幅が実現され、研究の効率性が大幅に向上しました。
1. シンプルな機器構成によりコスト削減。
2. 迅速かつ安定した運用が可能に。
3. 冗長構成とリアルタイム監視によって、内製化された安定運用が実現。
TEDは今後も理化学研究所と連携し、スーパーコンピュータの活用を一層進めるため、ネットワーク環境の整備に貢献していく意向です。これにより科学研究の更なる進展が期待されています。さらに詳細な情報については国立研究開発法人 理化学研究所の公式サイトやTEDのケーススタディをご覧ください。
参考情報