溶連菌の遺伝子解明
2025-07-30 14:30:21

劇症型溶連菌感染症を引き起こす遺伝子変異を発見した研究成果

劇症型溶連菌感染症を引き起こす遺伝子変異を発見した研究成果



大阪大学大学院歯学研究科の大野誠之助教と川端重忠教授らを中心とする研究グループは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因に関与する新たな遺伝子変異を特定しました。この発見は、増加する劇症型溶連菌感染症の治療や予防策の開発に大きく寄与する見込みです。

研究の背景と目的



溶連菌は、喉の炎症を引き起こすことが多い一方で、その重篤な形態である劇症型感染症も引き起こします。この感染症は、急速に進行する敗血症性ショックや壊死性筋膜炎を引き起こし、適切な治療を施しても約30%の患者が命を落とす治療が難しい病態です。近年ではこの感染症の症例が増加しており、2022年には数百件程度だった国内の患者数が、2024年には約2000件に達すると予測されています。

未だに有効なワクチンがなく、感染機序の解明も進んでいないことから、新たな研究が急務とされていました。そこで、研究グループは、溶連菌に関連する遺伝子変異を特定することによって、予防手段や治療法の開発につなげることを目指しました。

研究方法



今回の研究では、国立感染症研究所や地方衛生研究所の協力のもと、日本国内外の劇症型感染症や非劇症型感染症から分離した化膿レンサ球菌の全ゲノム情報を解読。スーパーコンピュータを駆使したパンゲノムワイド関連解析を通じて劇症型感染症と関連する新たな遺伝子変異を特定しました。特に、細菌の鉄イオンを取り込むための「鉄イオン輸送体」と呼ばれるタンパク質に一塩基変異が認められたことが重要です。これは日本の患者由来の菌にしか存在せず、他国の菌株では確認されていません。

さらに、研究チームは、この鉄イオン輸送体に非劇症型の変異を導入する実験を行い、人の血液中での細菌の生存率が低下することを確認しました。これは、鉄イオン輸送体が劇症型感染症において重要な役割を果たしていることを示唆しています。

今後の展望



この研究成果は、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症メカニズムを理解する手助けとなり、患者数や死亡率を効果的に減少させる新しい治療法や予防手段の開発に貢献することが期待されます。また、今回用いた解析手法は他の病原菌研究にも応用可能であり、幅広い疾患への影響も考えられます。

本研究の成果は、2025年7月25日付けで英国科学誌「eLife」にも発表され、より多くの専門家にその重要性が伝えられました。

まとめ



このように、大阪大学の研究グループによる溶連菌の遺伝子解析は、急増する劇症型感染症を対象とした重要な研究成果であり、今後の医療において新たな治療法の開発へとつながることを期待されています。


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国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
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大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目6番8号
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