大阪大学とNEC、100Gbps高速データ転送の実験デモを国際会議SC24で展示
大阪大学D3センターとNECが共同で設立した高性能計算・データ分析融合基盤協働研究所は、オープンサイエンスを推進し、データ活用を促進するデータ基盤RED-ONIONの研究開発を行っています。
このRED-ONIONの研究成果を、2024年11月17日から米国ジョージア州アトランタで開催されるハイパフォーマンスコンピューティングに関する国際会議・展示会SC24にて展示します。展示では、日米間の回線を用いて巨大研究データを100Gbpsの回線でサーバ間転送する実験デモを行います。
デモでは、一方のサーバに蓄積された1ファイルの巨大研究データを、もう一方のサーバに高速に転送します。事前検証では、1TBのデータ転送がわずか87秒で完了し、実効速度は92.0Gbpsに達しました。今回のデモ展示では、日米間の長距離転送での性能を確認します。
オープンサイエンス推進に向けたデータ基盤RED-ONION
近年、大学などの研究機関では、研究データを社会全体で共有するオープンサイエンスの推進が強く求められています。G7仙台科学技術大臣会合では、G7各国およびEUがオープンサイエンスの推進を共通認識として表明しました。
オープンサイエンスを推進するためには、研究データを様々な研究機関と共有可能とし、利活用可能な形で管理し、社会に広く公開するデータ基盤の構築が不可欠です。
大阪大学D3センターでは、学内外の研究者が保有する研究データを蓄積・共有可能とするデータ集約基盤ONIONの試験運用を2021年5月から開始しました。高性能計算・データ分析融合基盤協働研究所は、このデータ集約基盤ONIONを高速データ転送サービスにより高度化するRED-ONIONの研究開発に取り組んでいます。
高速データ転送がもたらす研究促進
従来、大容量・大規模な研究データを共同研究グループ間で共有する場合、低速なネットワークを用いる必要があり、転送に長時間を要していました。場合によっては、ハードディスクにデータをコピーして物理的に運搬する必要もありました。そのため、データ共有は非常に手間と時間がかかるものであり、データを活用した研究促進の障害となっていました。
RED-ONIONでは、大容量・大規模データを取り扱う学術研究の高効率化を目指し、学内で生成される膨大な研究データを、データ集約基盤ONIONを中核とする学内主要拠点間で高速に移動・共有できる高速データ転送サービスを実現します。これにより、大阪大学キャンパス内の研究データの流通性を高めるとともに、大容量・大規模データを取り扱う高性能計算・高性能データ分析を必要とする今日の学術研究の生産性を大幅に高めます。
高速データ転送システムの開発
RED-ONION実現に向けて、高性能計算・データ分析融合基盤協働研究所は、巨大研究データを研究拠点間で高速にデータ共有可能な高速データ転送システムのプロトタイプを開発しました。このシステムは、データ集約基盤ONIONを中核とし、学内主要拠点に研究データ転送専用の高速ネットワーク、サーバ、ストレージを配備します。
このシステムにより、大容量・大規模な研究データを学内主要拠点間で高速かつ効率的に移動・共有できるだけでなく、試験運用中のデータ集約基盤ONIONに収容することも可能になります。
SC24での実験デモ展示の詳細
SC24では、高速データ転送システムの長距離転送実験を実施し、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が出展する研究展示ブースで展示します。
この実験は、学内での研究データ共有だけでなく、国内他大学や他研究組織とのデータ共有、さらには海外研究グループとのデータ共有を想定した長距離データ転送での性能を確認することを目的としています。開発したプロトタイプを用い、国際間の長距離データ転送を想定した日米間および米国内のデータ転送実験をNICTが中心となり、日本国内外のNRENの協力を得て構築したネットワーク回線および実験環境を用いて実施する予定です。
技術協力
高速ファイル転送ソフトウェアArchaeaを開発する株式会社クレアリンクテクノロジーが技術協力を行いました。また、スーパーマイクロ株式会社がサーバ機器、株式会社データダイレクト・ネットワークス・ジャパンがストレージ装置、株式会社マクニカがネットワーク機器の一部を提供しました。
今後の展望
大阪大学とNECは、RED-ONIONの研究開発を継続することで、オープンサイエンスを促進し、研究データの利活用を促進することで、学術研究の発展に貢献していきます。