地震による地盤沈下と液状化のリスクを軽減する画期的なシステム開発
地震は、私たちの生活基盤を脅かす深刻な自然災害です。特に、地盤沈下や液状化は、構造物の倒壊やインフラの損壊を引き起こし、甚大な被害をもたらす可能性があります。
芝浦工業大学工学部・稲積真哉教授らの研究チームは、地震による地盤沈下と液状化のリアルタイム被害予測システムを開発しました。このシステムは、土地の地盤強度を予測することで、構造物の建設に適したエリアの特定を可能にし、地震発生時の構造物倒壊のリスクを抑制することを目指しています。
広範囲の地盤データを3次元マップ化
従来、地震の影響を受けやすい土地の調査は、特定の地域における限定的なサンプリングにとどまっていました。そのため、広範囲の土地の状態を正確に把握することは困難でした。
本研究では、東京都世田谷区内433地点の地盤データを収集し、緯経度や標高などの地理的データと統合することで、広範囲における支持層※1の分布を示す3次元マップの作成に成功しました。この3次元マップは、開発用地やインフラ、公共施設の設計・配置を最適化するだけでなく、リアルタイムで複数地点の土地の状態を予測することも可能です。
地盤強度をリアルタイム予測し、早期警報システムとしての機能も期待
本システムは、地盤データに加えて、地中の水分や地盤の動きなどのパラメーターを監視するセンサーから得られるリアルタイムデータと統合することができます。これにより、土壌状態の変化を継続的に監視することが可能となり、土壌の不安定性など健全性を損なう潜在的リスクを特定し、開発用地やインフラ、公共施設の設計・配置を最適化することができます。
さらに、このシステムは、潜在的な危険をいち早く特定する早期警報システムとしての機能も期待されています。地震発生前に、危険度の高いエリアを特定することで、迅速な避難や対策を講じることが可能になります。
都市計画における災害リスクの軽減に貢献
本システムは、都市計画における災害リスクの軽減を促進し、国際連合が提言する「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標11「住み続けられるまちづくりを」に貢献するものと言えます。目標11では、都市をより包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にすることが目指され、とりわけ日本のような地震多発地域においては、柔軟な都市計画の実行が求められます。
本研究は、国や自治体が新たな都市計画を考える際や、建設業者が事前のリスク評価を行う際に役立てられ、将来的には、個人が携帯電話等でリアルタイムに地理データや警報を確認できるシステムへの活用にも期待されています。
※1 支持層:構造物が不均一に沈下する(不同沈下)などの有害な変形が起きず、構造物を支えることに適した地盤。
未来へ向けた更なる発展
本システムは、地震に対する安全性を向上させ、より安全で安心できる社会の実現に貢献する可能性を秘めています。今後の研究開発により、より精度の高い予測を実現し、災害リスクを最小限に抑えることが期待されます。