AIによる前房深度推定技術が緑内障に新たな光明を
株式会社OUIが医療法人慶眼会横浜けいあい眼科との共同により、スマートフォン取付型の細隙灯顕微鏡を用いた前房深度(ACD)推定アルゴリズムを開発しました。この研究成果は、国際学術ジャーナル「Bioengineering」に2024年10月9日付で発表されました。
研究の意義
前房深度は、原発閉塞隅角緑内障(PACG)などの眼疾患のリスク評価において非常に重要な指標とされています。但し、従来のACD測定装置は高価であり、また専門的な知識を要するため、手軽なスクリーニング方法とは言い難いのが現状です。この問題を解決するために、OUIの研究チームはAI技術による新たなアプローチを採用しました。
開発された技術
今回の研究で導入されたスマートフォンアタッチメント型細隙灯顕微鏡(Smart Eye Camera: SEC)は、一般的な医療機関の環境で使用されることを想定しており、手軽に高精度の前房深度推定が可能です。これは、大規模なデータセットを用いて機械学習モデルを構築し、204,639フレームの前眼部画像から得られた1,586眼のデータを基にしています。
このアルゴリズムの性能は非常に高いもので、平均絶対誤差(MAE)は0.093 mm、平均二乗誤差(MSE)は0.123 mmという結果が得られました。特に、閉塞隅角リスクの評価においては、感度94.3%、特異度90.2%の高い数値を記録しています。
期待される成果
このAIモデルは、緑内障スクリーニングにおけるアクセスの向上をもたらすことが期待されています。特に眼科医療にアクセスが限られている地域において、この技術の導入は非常に有意義です。今後はこのアルゴリズムを外部データセットで検証し、臨床現場での実用化を目指すとのことです。
今後の展望
OUIは、前房深度推定AIにとどまらず、様々な眼科疾患に関する診断AIの開発にも力を入れています。この研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構などからの助成を受け進められました。AI技術の進化が、医療界にどのような革新をもたらすのか、今後の動向に注目です。