Obicetrapibの心血管疾患における重要な研究結果
背景
心血管疾患は今や多くの人々に影響を与える病であり、特に動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を予防するために、悪玉コレステロールである低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の管理は重要です。これまでの治療法であるスタチンやエゼチミブ、PCSK9阻害薬などを駆使しても、依然として多くの高リスク患者が推奨されるLDL-C値に到達できないケースが散見されます。
そこで新たに登場したのが、Obicetrapibという高選択的コレステリルエステル転送タンパク(CETP)阻害薬です。この薬は従来のCETP阻害薬とは異なり、高い水溶性を保ちながら脂肪組織への蓄積を少なく抑える特性があります。
BROADWAY試験の概要
この度、大阪医科薬科大学の斯波真理子教授らが参画した国際共同研究「BROADWAY試験」が、アメリカの医学雑誌『The New England Journal of Medicine』に掲載され、Obicetrapibの心血管患者への有効性と安全性が検証されました。この試験は合計2,530人を対象とし、1年間にわたりObicetrapib(10 mg/日)またはプラセボを投与し、LDL-Cの低下効果と各種有害事象の発生率を比較しました。
対象患者の平均年齢は65歳で、女性が34%を占め、89%がASCVD患者。治療の結果、84日目には、Obicetrapib群ではLDL-Cが29.9%の低下を示し、プラセボ群では逆に2.7%の上昇を示しました。この結果は非常に顕著であり、両群間の差は-32.6ポイントに達しました(P<0.001)。
試験の結果
試験によると、51%の患者がLDL-Cを55 mg/dL未満に抑えることができました。さらに、アポリポタンパクB、非HDL-C、Lp(a)といった他の脂質マーカーも有意に低下しました。興味深いことに、有害事象の発現率は、Obicetrapib群とプラセボ群でほぼ同程度であることが確認され、安全性にも問題がないことが示されました。
研究の意義と今後の展望
BROADWAY試験の結果は、Obicetrapibがスタチンや他の既存の治療法にない新たな治療オプションを提示するものであり、特に治療効果が不十分な患者にとって大きな希望となると考えられます。今後は、長期心血管イベントに対する抑制効果を検証する「PREVAIL試験」が進行中であり、その結果に期待が寄せられています。
このように新たな薬であるObicetrapibは、再び心血管疾患治療の選択肢を広げていくことでしょう。今後の研究成果に注目です。