腸内細菌移植が開くパーキンソン病新治療の道
順天堂大学とメタジェンセラピューティクスは、パーキンソン病患者を対象とした「腸内細菌叢移植療法」の安全性と治療効果を検証するための共同研究を開始しました。本研究は、パーキンソン病に新たな治療の選択肢をもたらすことを目指しています。
パーキンソン病とその治療の現状
パーキンソン病は、中脳の神経細胞にαシヌクレインが蓄積し、ドーパミンが減少することで引き起こされる神経疾患です。日本国内では約29万人がパーキンソン病と診断されており、特に高齢者に多く見られます。2030年には、世界でおよそ3000万人がこの疾患に罹ると予測されており、早急な治療法の開発が求められています。
現在の治療薬は多く存在するものの、長期的な効果や副作用、運動症状の管理といった問題がございます。このため、疾患修飾療法の開発が強く期待されています。しかし、未だにパーキンソン病の進行を抑制する新薬の開発は進んでいません。最近の研究では、腸内細菌叢がパーキンソン病の進行に関与していることが示唆され、腸内環境の改善が治療に寄与する可能性があるとされています。
研究の背景と目的
本研究において、順天堂大学の神経学講座主任教授である服部信孝氏は、「パーキンソン病は単なる脳の疾患ではなく、全身疾患や腸の疾患とも考えられる」と述べ、腸内細菌が治療の鍵であるとの見解を示しています。この研究は、医療従事者と患者にとって重要な進展と位置づけられており、新たな治療法開発に向けた大きな一歩となることでしょう。
メタジェンセラピューティクスのCEOである中原拓氏は、腸内細菌叢移植療法の可能性と、研究への期待を強調しています。特にパーキンソン病の治療は、今後ますます注目される領域であり、同社の知見を活かした新しい治療法の開発に努めていくと述べています。
研究概要
この共同研究の目的は、パーキンソン病患者に対する抗菌薬を併用した腸内細菌叢移植療法の有効性と安全性を確認することです。具体的には、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、腸内細菌叢を移植する方法に焦点を当てます。研究の実施は順天堂大学医学部附属順天堂医院で行われ、専任の研究者チームがプロジェクトを推進します。
患者の腸内細菌叢を抗菌薬で減少させ、その後健康なドナーからの細菌叢溶液を移植するという流れで進められます。主要評価項目には、パーキンソン病の機能を評価するための標準的な評価法であるMDS UPDRSが含まれ、さらに腸内細菌の変化や炎症マーカーの測定も行われます。
今後の展望
本研究は、順天堂大学の「GAUDIアワード」にも採択されており、産学連携での実用化研究を促進することが期待されています。腸内細菌叢移植療法がパーキンソン病の新たな治療法として確立されれば、患者のQOL向上を図る重要な選択肢となるでしょう。
この画期的な研究が今後どのような結果をもたらすのか、多くの関係者が注目しています。