岡山大学が開発した画期的な脂質分布可視化技術の全貌
岡山大学と甲南大学が共同で行った研究により、線虫(C. elegans)の内部構造とその脂質分子の分布を対応づける質量分析イメージング手法が世界で初めて開発されました。この技術は、体内における脂質の三次元分布を、線虫の内部構造を保ちながら可視化することを可能にします。
研究の背景と概要
線虫は、脂質代謝や糖尿病、神経変性疾患などのヒト疾患の研究において非常に重要なモデル生物です。線虫における脂質代謝経路は、哺乳類と高い類似性を持つため、これを用いた研究は今後の医学研究の発展に貢献することが期待されています。
今回の研究は、岡山大学の藤原正澄教授と大学院生のサラ・マンディッチ氏、さらに甲南大学およびオランダのマーストリヒト大学との共同研究によって実現されました。彼らは、10µmの連続切片を取得し、質量分析と染色法を併用することで、脂質の動態を正確に解析できる手法を確立しました。
技術の詳細
この新しい質量分析イメージング手法では、線虫の切片を凍結微小状態で作成し、分子量の異なる脂質を色分けして表示することができます。切片から三次元画像を構築することの難しさを克服し、初めて成功したことに研究者たちは驚嘆しています。これにより、特定の器官における脂質の分布を詳細に把握することができるようになりました。
これまで環境や栄養状態、ストレスが脂質に与える影響の解析は困難でしたが、この手法が確立されたことで、今後は老化やストレス、さらには創薬へ向けた研究にも応用できる可能性が広がります。
今後の展望
本技術の応用により、疾患の早期診断や新たなバイオマーカーの発見が期待されます。また、脂質に関する基礎研究が進むことで、医療や創薬において強い影響を及ぼすことが予想されます。藤原教授は「この技術は、分子機能の可視化と定量化に新たな道を切り開くものだ」と語ります。
サラ・マンディッチ大学院生も、「この手法をさらに発展させていくことが楽しみ」と今後の研究に意欲を見せています。
論文の発表
本研究成果は、2025年7月9日に「Scientific Reports」に掲載され、全国に向けて広く知られることとなりました。この研究は、日本学術振興会などからの独立行政法人や財団からの支援を受けて進められました。
まとめ
岡山大学と甲南大学のこの共同研究は、科学技術の進展のみならず、医療分野への新たなアプローチを見出す重要な成果です。今後の研究では、線虫を用いた新たな脂質代謝研究が盛んになり、より深い理解が得られることでしょう。-
上述の技術がもたらす革新が、多くの命を救うことに繋がることを期待したいと思います。