リサイクル炭素繊維の国際標準化が進む
近年、素材のリサイクルが注目される中、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)においてもリサイクル技術の深化が求められています。特に、CFRPはその優れた特性から広く利用されており、そのリサイクルは新しい資源の循環を促す重要な鍵となります。国立研究開発法人である産業技術総合研究所(産総研)が開発した、リサイクル炭素繊維の品質評価方法が国際規格ISO19350:2025として認められたことで、炭素繊維のリサイクル技術の進展に大きな弾みをつけました。
リサイクル炭素繊維の持つ課題とは
CFRPは高い耐久性を有し、解体やリサイクルが極めて難しいため、リサイクル炭素繊維の特性は新品の炭素繊維とは異なることが知られています。このため、リサイクル炭素繊維の品質評価は新しいアプローチが必要でした。リサイクルした炭素繊維は、CFRP由来の樹脂が残ることもあり、評価基準を精査する必要がありました。
新たな評価方法の確立
この新しいISO規格では、繊維引張強度分布と繊維と樹脂の界面力を同時に評価する手法が明記されており、この点が特に画期的です。リサイクル炭素繊維の特性を正確に測定するためには、破断強度の測定だけでなく、繊維の破断過程をも考慮した方法が求められていました。これを可能にしたのが、産総研が改良型フラグメンテーション試験を開発した点です。この手法により、リサイクル炭素繊維の性能がより精密に評価され、市場におけるその信頼性が高まることが期待されています。
国際規格としての意義
ISO19350:2025の公式発行を通じて、日本の炭素繊維技術が国際的に評価され、リサイクル炭素繊維を活用した新製品の市場拡大が加速することが見込まれます。今回の国際規格は、産総研が提案し、短期間で審議を経て成立しました。これにより、各国でのリサイクル炭素繊維の普及が促進され、持続可能な製品開発が進む基盤が整いました。
今後の展望
産総研はISO19350:2025の枠を越えて、さらなるリサイクル炭素繊維の評価技術を開発し、国際標準化に向けた提案を続けていく予定です。日本が得意とする炭素繊維技術は新品のみならずリサイクル分野でも強化されることでしょう。資源循環型社会の実現に向け、具体的な行動が求められている中、本規格の意義はますます重要性を増しています。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、航空宇宙や再生可能エネルギーなどの多様な分野で需要が高まっています。今後も持続可能な社会の実現を目指して、リサイクル技術の発展に注目が集まります。知道圏がするリサイクル炭素繊維は新たな時代の素材として、私たちの暮らしに深く根付いていくことでしょう。
参照情報
- - ISO 19350:2025 規格の概要
- - 産総研プレスリリース こちらから