子どもとスクリーンタイムの密接な関係
近年の研究によれば、子どもたちがスクリーンに向かう時間が、注意欠如多動症(ADHD)症状や脳の構造に影響を与える可能性があることが示されています。福井大学の研究チームは、アメリカで行われた「Adolescent Brain Cognitive Development(ABCD) Study」のデータを用いて、この関連性を詳しく調査しました。
世界最大規模の研究
この研究は、約1万人の子どもを対象にした大規模な縦断研究で、その中には9〜10歳の子どもが含まれています。調査では、彼らのスクリーンタイム、ADHDの症状、脳の構造を細かく分析しました。特に、スクリーンタイムが長い子どもほどADHDてきな行動が増加し、また脳の一部が薄くなる傾向があることが分かりました。
ADHD症状と脳の構造
研究結果によれば、スクリーンタイムが長い子どもは、2年後のADHD症状の評価で高得点を記録する傾向が明らかになりました。また、脳の特定の領域、特に前頭葉や側頭葉の皮質が薄くなることが確認され、これはADHD症状の発展と関連していることが示唆されました。さらに、脳全体の皮質体積がスクリーンタイムとADHD症状の関連を仲介することが判明しました。
デジタルデバイスの影響
デジタル時代において、スマートフォンやゲーム機の普及に伴い、子どものスクリーンタイムは急速に増加しています。特にCOVID-19パンデミック以降、オンライン授業やリモート交流が日常化し、長時間のスクリーン利用が一般化しました。過剰なスクリーン利用は身体活動の減少や心理的健康への悪影響が報告されています。
研究の意義
この研究は、スクリーンタイムがADHD症状や脳の構造に与える影響を解明する上で、重要な知見を提供しました。特に、スクリーンタイムが脳の発達に及ぼす影響を理解することは、今後のメディア利用に関するガイドライン作成や教育・医療支援において重要です。教育現場でも、デジタルメディア利用に関する科学的根拠を基にした支援方針を考慮する必要があります。
今後の展開
今後は、脳の機能的結合やネットワーク解析を通じて、スクリーンタイムとADHD症状との関連をさらに深掘りし、子どもたちにとって健全なデジタルメディア利用の在り方を模索していくことが不可欠です。この研究が、ADHD症状の軽減や効果的な支援策の確立に寄与することが期待されています。