DCT普及推進の新提言:日本CTX研究会の取り組み
三菱総合研究所(MRI)が主催する日本CTX研究会は、治験の効率化と国際共同治験への参加を促進するため、「日本におけるDCT普及に向けた提言」を発表しました。この提言は、国内の治験環境改善を目的としており、特にドラッグ・ラグやドラッグ・ロス解消につながる施策が重要視されています。
背景と現状
近年、国内のドラッグ・ラグが再び問題となっており、その要因として国際共同治験への参加率の低さが挙げられます。2021年に実施された1,051件の国際共同治験に対して、日本の参加率はわずか19.6%でした。これにより、新しい医薬品へのアクセスが制限される状況が続いており、日本が治験に選ばれる環境を整えることが求められています。これを実現するためには、治験形態の転換、すなわちCTXが必要です。
CTXの重要性
CTXとは、治験を効率的かつ効果的に実施するためのアプローチであり、特にデジタル技術を活用した分散型治験(DCT)の導入が注目されています。DCTは、治験参加者が遠隔地から参加できるシステムで、治験の柔軟性を高め、患者の負担を軽減します。しかし、日本においてはこのプロセスの導入が遅れており、国際的な水準に対応するための急速な取り組みが求められています。
日本CTX研究会の取り組み
MRIは、2023年10月1日に日本CTX研究会を設立しました。最初のテーマとしてDCTを設定しましたが、課題を優先順位に基づき二つに分け、相互理解の促進と実績・エビデンスの創出に向けた環境整備に注力しています。このような取り組みが、国内のDCT普及を後押しすることが期待されています。
提言書の主な内容
提言書では、DCTの利点や実施にあたっての観点が整理され、次の6つの提言が示されています:
1. 現行の治験環境を「世界から選ばれる治験環境」に変えるための施策の推進。
2. 治験に関する契約の標準化や効率化を進めるためのDXの導入。
3. DCTを実施するのに必要な新たな職種や人材要件の整理。
4. DCT導入によるエビデンスの確立を目的とした国の支援。
5. DCTに関連する相談窓口や情報共有の場の整備。
6. 規制当局や学会を含む関係者による自由な議論の場の構築。
これらの提言が実現されれば、日本の治験環境は大きく変わり、医薬品のアクセス改善にも寄与することでしょう。
今後の展望
日本CTX研究会は2024年から第2期会員の募集を開始します。次期では、DCTに限らず治験の効率化を目指して議論を進める予定です。新規参画希望者には、より多様な視点からの参加が期待されています。
提言書は日本CTX研究会の公式ホームページで公開されており、全国の関連するステークホルダーに対して広く周知されています。国内の治験環境の変革が急務であり、これに対しての理解と取り組みが一層求められています。
最新の提言や活動情報は、
日本CTX研究会のウェブサイトで確認できます。