スキルス胃がんの新治療
2021-12-10 16:44:46

スキルス胃がんの新たな治療法に期待、インテグリンα5をターゲットにした研究

スキルス胃がんの新たな治療法に期待



スキルス胃がんは、その進行の速さと特殊な転移様式から、早期発見が極めて難しいがんの一種です。このがんは主に若年層にも見られることから、その治療と早期発見が重要な課題となっています。国内での5年生存率は10%〜15%と極めて低く、特に腹膜播種という転移の障害が治療困難さを一層強めています。この度、スキルス胃がんの新たな治療標的となる分子が明らかになり、医療の未来に影響を与える可能性が出てきました。

スキルス胃がんの特性と課題



スキルス胃がんは、がん関連線維芽細胞(CAF)と呼ばれる細胞が異常に増殖し、がん細胞との接着を促進することで浸潤を引き起こしやすくなります。この接着は、細胞同士の内部に複雑な相互作用を形成し、腫瘍の成長と転移が進む原因となっています。これまでスキルス胃がんに対して有効な分子標的治療薬はなく、今回の研究はその新たな扉を開くものとなります。

研究の成果



研究チームは、スキルス胃がん細胞とCAFの接着のメカニズムに着目し、その接着を阻害するモノクローナル抗体を開発しました。その結果、インテグリンα5という抗原分子が、スキルス胃がんに特有の高発現を示すことが判明しました。このインテグリンα5は、がん細胞の表面でインテグリンβ1とのヘテロダイマーを形成し、CAF上に存在するフィブロネクチンと結合することで、両細胞の接着を助ける役割を果たしています。

さらに、インテグリンα5のノックアウトや抗体の投与により、スキルス胃がん細胞の浸潤能力やマウスモデルにおける腹膜播種が抑制されることが確認されました。この結果は、インテグリンα5がスキルス胃がん治療における有力なターゲットとなることを示唆しています。

今後の展望



この研究の成果は、スキルス胃がんに対する新しい分子標的治療の開発に大きな貢献を果たすと考えられます。今後は、効果や副作用についてのさらなる研究が必要ですが、インテグリンα5をターゲットとした抗体医薬が臨床で活用される日が来るかもしれません。スキルス胃がんの新たな治療法が実現することで、多くの患者の命を救える可能性が広がります。

研究は「Integrin α5 mediates cancer cell-fibroblast adhesion and peritoneal dissemination of diffuse-type gastric carcinoma」というタイトルで、著者には宮本進吾、長野美子らが名を連ね、权威のある『Cancer Letters』に掲載されました。この研究結果は、スキルス胃がんという難治がんに立ち向かうための光明となることでしょう。

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