フィルム型ペロブスカイト太陽電池の新しい可能性
再生可能エネルギーの導入が進む中、特に都市部における設置の課題が浮き彫りになっています。近年、積水化学工業株式会社、積水ソーラーフィルム株式会社、株式会社NTTデータ、日軽エンジニアリング株式会社が、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の壁面設置に向けた新たな改良工法の開発を開始しました。この取り組みは、2025年10月から始まり、2029年3月までの期間にわたって実施されます。
1. 開発の背景
都市部では、再生可能エネルギーの導入が進みにくい現状があります。特に、太陽光パネルの設置場所や建物の荷重制限が影響し、従来の太陽光発電の普及が困難でした。屋上スペースが限られている都心では大規模導入が難しく、郊外で発電した電力を送電する方式が一般的です。しかし、この方法では送電ロスやコスト増加といった問題が生じることが多いため、解決策が求められていました。
このニーズに応える形で登場したのが、フィルム型ペロブスカイト太陽電池です。このタイプの太陽電池は軽量で柔軟性が高いため、既存の建物の外壁や窓面への設置が可能であり、都心部での地産地消に貢献することが期待されています。
2. 改良工法の概要
4社は、これまでの実証を基に、軽量性や施工性に配慮した新たな工法を開発しています。アルミ押出形材を使用した固定金物を導入し、大量生産と軽量化を両立させることを目指します。また、フィルム特有の「しわやよれ」を簡単に調整できる工法も採用し、見た目の美しさにも配慮しています。
具体的な実証内容
- - 設置方法や太陽電池モジュールの固定方法確立
- - 塩害地域での耐久性検証
- - 都心部での施工性検証
- - アルミ加工工場での製造性検証
これらの実証を通じて、フィルム型ペロブスカイト太陽電池が実社会においてどれほど効果的かを検証していきます。
3. 各社の役割
| 社名 | 役割 |
|---|
| - | - |
| 積水化学・積水ソーラーフィルム | 外壁設置に必要なモジュール提供や性能試験への助言 |
| NTTデータ | フィールド提供、設置工事及び性能試験実施 |
| 日軽エンジニアリング | 固定金物の設計や試作・製造計画の立案 |
各社がそれぞれの強みを活かし、協力してこのプロジェクトを進めていきます。
4. 今後の展望
2025年度中にはNTT品川TWINS DATA棟でのさらなる設置が行われ、その成果を社会実装へと繋げる予定です。これによって都市部での再生可能エネルギーの普及を後押しし、持続可能な社会を実現するための鍵となります。特に、脱炭素社会に向けた取り組みとして、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の適用拡大を進めることが求められています。
積水化学と積水ソーラーフィルムは、これらの検証を通じて、気候変動に対処するための新しいソリューションを提供することを目指しています。NTTデータは、2030年度までにデータセンターのカーボンニュートラルを実現するためのモデルを確立していく考えです。日軽エンジニアリングも、施工性と耐久性が両立する製品の提供に努め、持続可能な社会に貢献していく予定です。