環境と調和する建築「暖居」
有限会社きたもっくと御手洗龍建築設計事務所、そしてとおい山株式会社の共同プロジェクトにより生まれた「暖居(だんきょ)」。この小さな建築は、北軽井沢の厳しい自然環境とも調和したデザインで、2025年度グッドデザイン・ベスト100として高く評価されました。
自然との共生をテーマにした設計
「暖居」は、著名な詩人・谷川俊太郎が北軽井沢に建設した住宅の離れとして企画され、わずか10㎡の広さのこの小屋は、周囲の自然を感じられる居場所を提供します。
最大の特徴は、環境への配慮から基礎工法を変更した点です。従来のように地面に基礎を打ち込むのではなく、敷地内の4本のナラの木にアンカーボルトで建物を「引っ掛ける」ことで、地中環境を圧迫せず、木の根を守る設計となっています。これにより、約1.5メートルの高さで浮遊する形で建っており、見た目にも美しい存在感を放っています。
火のある空間と地域資源の活用
「暖居」の中心には、地域での薪ストーブ施工の経験を踏まえた薪サウナが設置されています。この薪を焚いて室内を暖かく保つことで、身体を心地よく温めることができます。また、内装には地域の広葉樹を伐採し、自社で製材した木材を使用しており、地域資源を循環させる取り組みを実施しています。これは、地域とのつながりを大切にした活動の一環です。
自然と一体化する「螺旋状の窓」
「暖居」での滞在は、四方に設けられた螺旋状の窓を通して自然と結びつくことを目指しています。各窓は、高さを変えながら配置されており、驚くほどの景色を室内に取り込むことができます。このレイアウトにより、外気や風を感じながら、まるで身体全体が自然に包まれているような体験を提供します。火を焚くことで生まれる温熱環境の変化もしっかりと感じ取ることができ、温かさと涼しさを同時に楽しむことができます。
持続可能な未来を築く
今回の「暖居」の受賞により、有限会社きたもっくはさらに地域の自然を生かした新たなプロジェクトに取り組む意欲を示しています。同社は、浅間山の麓で地域資源を活用した持続可能な開発を推進し、2021年度にはグッドデザイン金賞も受賞しています。今後は他地域との連携を深め、日本の中山間地域の新たな産業モデルを構築することを目指しています。
会社概要
有限会社きたもっくは、2000年に設立され、地域資源の価値化や人と自然をつなぐ場づくりを展開しています。企業が持つノウハウと地域環境を活かした事業を推進し、年間約8万人を迎えるキャンプ場「北軽井沢スウィートグラス」を運営しています。これにより、地域の活性化と持続可能な未来の創造に寄与しています。
この「暖居」の受賞は、きたもっくの理念と活動が認められたことを示しており、今後のさらなる展開が期待されています。これからの取り組みにもぜひ目を向けていきたいと思います。