半導体微細加工技術の新たな挑戦
東京工業大学 物質理工学院の研究チームは、最新技術を駆使して、これまでの限界を突破した半導体微細加工技術を発表しました。この研究は、電子デバイスの性能向上に寄与することを目的としたもので、特に線幅7.6nmの構造物を形成することに成功しました。
研究の背景
近年、人工知能やクラウドサービスの急速な発展、さらにはスマートフォンの高性能化・小型化により、電子デバイスに使用される半導体チップのさらなる性能向上が求められています。特に、半導体微細加工技術が重要な役割を果たしています。従来のフォトリソグラフィ技術では、線幅10nm以下の微細加工が難しく、新たな加工手法が必要でした。このニーズに応えるため、分子の自己集合を利用するボトムアップ型の微細加工技術に注目が集まっています。
研究の目的と成果
本研究では、極性官能基の比率を精密に制御して設計した高分子ブロック共重合体を開発しました。このブロック共重合体は、シリコン基板の上に薄く塗布され、線幅7.6nmの回路パターンを形成しました。これは、フォトリソグラフィの限界を超えるものであり、電子デバイスの高性能化に大いに期待されています。東京工業大学と東京応化工業株式会社との共同研究によって成し遂げられたこの成果は、2024年7月6日に『Nature Communications』に掲載されました。
技術的なアプローチ
この新技術は、特にブロック共重合体の特性に依存しています。分子の自己集合によって形成されるミクロ相分離構造が、ナノ周期構造を生み出し、この構造が回路パターンの型として機能します。ブロック共重合体を用いることで、フォトリソグラフィによる凹凸パターン形成の限界を克服することが可能になりました。
具体的には、高分子の構成成分間の相互作用が重要です。この研究では、PS-b-PMMA(ポリスチレンとポリメタクリル酸メチルのブロック共重合体)を利用しながら、極性官能基を添加することで成分の相互作用を高め、ミクロ相分離構造を形成することに成功しました。
社会的な意義
今後、この技術はさらなる高解像度化と高密度化を推進し、電子デバイス市場における競争力を高めることが期待されます。特に、スマートフォンやクラウドサービスのような高速通信を支えるデバイスにおいて、その影響は計り知れません。さらに、これにより新しいアプリケーションの可能性が広がり、社会全体のデジタル化を一層進めると考えられます。
未来への展望
今後は、実用化に向けて300mmシリコンウエハ上での加工実験を行い、その結果を基にさらに機能評価を進めていく予定です。また、教育機関や研究機関との連携を強化し、産業界と共同で新しい技術の商業化を目指します。くれぐれもこの新しい技術の成果が、多くの電子デバイスに生かされることを期待しています。
このような革新的な技術の進展は、私たちの生活に大きな影響を与えることは間違いありません。今後の研究が楽しみです。