画期的な低電力画像処理技術の誕生
富士通株式会社と国立大学法人山口大学が共同で、低軌道合成開口レーダー(SAR)衛星における画像処理を革新する技術を開発しました。この技術は、衛星上で冗長構成GPUを使用し、10分以内に準リアルタイムで画像処理を行うことができる、低電力エッジコンピューティングを実現します。従来の衛星データ処理は地上で行われていたため、データ取得から活用までが数時間かかっていましたが、この新技術により迅速な情報活用が可能になるのです。
技術の背景と必要性
地球上約200kmから約36,000kmの高度を飛行する人工衛星は、広範囲なデータを収集できる一方、その利用には多くの課題がありました。特に、小型衛星が供給できる電力は通常20W以下であり、限られた電力内で効率的にデータ処理ができるシステムが求められていました。また、宇宙放射線による誤作動も大きな課題で、これに対する対策が必要でした。これを受け、富士通と山口大学は、AIやスーパーコンピュータで培った技術を応用し、限られた電力で高いエラー耐性を持つコンピュータシステムを開発しました。
開発された新技術の特色
新技術では、冗長構成を持つコンピュータシステムを用いています。これは、2つのプロセッサで同時に同じ処理を行い、結果を比較することで誤作動を検出する方式です。これにより、宇宙放射線によるエラー検出が可能となりますが、消費電力を抑えるため、処理内容ごとにプログラムの動作を制御する工夫がなされています。また、宇宙放射線への高い耐性を持つプログラミング環境も構築され、これにより開発者は簡単にロバストなプログラムを作成できるようになります。
具体的な成果例
実際にこの技術を用いたプロトタイプにおいては、衛星から得た生データをもとに、L1処理とL2処理を用い、洋上の風速をリアルタイムで求めることに成功しました。これは、風速が高い地点の情報を迅速に取得し、船舶の安全に寄与することが期待されます。データ処理を準リアルタイムで行うことで、より迅速な判断が求められる分野において、その応用範囲は広がっていくことでしょう。
今後の展望
この新技術の実用化に向けて、富士通は2026年にライブラリ「Fujitsu Research Soft error Radiation Armor」(FRSORA)を公開予定です。このライブラリは、エラーの検出や再計算機能を簡単に実装できるようにしており、今後は衛星上でのデータ処理及びAIの導入も視野に入れて研究が進められています。最終的には、より高度な処理判断を伴う即時性の高いサービスと運用の高度化が期待されています。
結論
富士通と山口大学が協力することで、小型衛星上でのデータ処理がより効率的かつ迅速化される道筋が示されました。これにより、今後の宇宙産業においても、さらに新たな技術が則造されることでしょう。