科学で解明された「超延伸性スライム」の魅力
多摩六都科学館と、総合科学研究機構(CROSS)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究チームが、手作りスライムの特性に新たな光を当てました。彼らは「超延伸性スライム」の物性を科学的に分析し、その結果を2025年7月に発表する予定です。本記事では、その鍵となる知見を紹介し、このスライムの魅力に迫ります。
研究の背景
手作りスライムは、家庭や教育現場で非常に人気がありますが、その物理的特性には多くの謎が残されています。特に、スライムの「やわらかさ」や「伸びやすさ」は感覚的なものとされ、科学的に定義されることはありませんでした。今回の研究は、この不明確な特性についての疑問に挑むものです。
研究の進展
研究は、多摩六都科学館の学芸員である佐々木有美氏を中心に、KEKとCROSSの研究者との共同作業として進められました。特にレオロジー(粘弾性の研究分野)の手法を用い、スライムの物性を数値化し、視覚的に捉えることを試みています。
スライムの材料と特性
本研究の重要なポイントは、「スライム」の成分にあります。通常、スライムはポリビニルアルコールにホウ砂を加える形で製作されますが、今回の研究チームはグアーガムや木工用ボンド、グリセリンなどを使用し、スライムの特性を大きく向上させることを目指しました。
「超延伸性スライム」の特性
研究の成果として、今回開発された「超延伸性スライム」は、外部からの力を受けた時に10メートル以上に伸びることが発見されました。このスライムは、粘弾性が高く、流体と固体の両方の性質を持つため、様々な形状に変化することができます。特に、適量のグリセリンが加えられると、柔軟性や弾力性が向上し、使用感が劇的に改善されることが確認されました。
物性の数値化
研究チームは、スライムの物性を数値化するために、核磁気共鳴装置を使用しました。この手法により、これまで感覚的に捉えられていたスライムの特性を、科学的根拠に基づいて説明することができました。スライムに対する理解が深まることで、今後の応用も広がることが期待されています。
今後の展望
スライムのようなハイドロゲルは、医療や工業製品、さらには環境技術に至るまで、多くの分野での応用が可能です。研究で使用されたグアーガムは、安全性が高く、環境にも優しいため、持続可能な素材としての利用にも期待が寄せられています。
まとめ
今回の多摩六都科学館での研究は、スライムという親しみやすい対象を通じて、科学の面白さや重要性を再確認するものとなりました。今後の研究が進展することで、スライムに新たな価値を見出すことができるかもしれません。科学の力で未知の世界を探求する姿勢は、多くの人に新たな学びを提供するでしょう。