トポロジーでアモルファスの硬さを解明する新研究の意義とは

アモルファス材料の硬さに迫る新たなアプローチ

大阪大学を中心とした研究グループが、アモルファス材料に関する革新的な研究結果を発表しました。アモルファスとは、結晶を持たない無秩序な構造を持つ材料で、広く利用されているガラスや半導体素材の一部に該当します。研究チームは、アモルファス材料の柔らかさのメカニズムを解明するために、数学的手法のトポロジーを応用しました。

研究の背景

アモルファス材料の電気伝導特性や機械特性は、結晶とは異なり、その構造が力学的応答に影響を与えることが知られています。しかし、アモルファスにおいては、その構造がどのように硬さや柔らかさに関与しているのか、長年の間、解明されないままでした。この研究は、その謎を解く重要な手がかりとなるかもしれません。

アプローチと発見

トポロジーの利用

研究チームは、トポロジカルデータ解析の手法の一つである「パーシステントホモロジー」を用いて、アモルファス材料の原子構造を解析しました。この手法により、アモルファスの中に存在する原子の配列から、特定の「環」の情報を抽出することができました。

階層構造の発見

研究の結果、アモルファス内で非アフィン変形（均一な変形ではなく、不均一な原子の変位が起きる現象）が起こりやすい場所には、異なる大きさの環が共存する階層構造が存在していることが判明しました。具体的には、大きな環に小さな環が含まれる入れ子状の構造で、ここに規則性と乱れが共存しています。この新たな知見は、アモルファス材料の物理的特性を改善するための設計に向けた新たな指針を提供します。

今後の展望

この研究成果は、割れにくいガラスや、しなやかで強靭なアモルファス材料の設計に寄与する可能性が期待されています。柔らかい材料が求められる場面で、どのようにして高い耐久性を保つことができるかを数学的に説明できることは、材料開発に新たな方向性をもたらします。

南谷教授は、研究の結果が人類の活動にも応用できるポイントに触れ、「この成果を多元素系のガラスなどにも活かすことで、さらなる応用を探りたい」と語っています。今後、このアプローチがさまざまな素材に適用されることが期待されています。

研究成果の公表

本研究は2025年9月25日に英国の科学雑誌『Nature Communications』に掲載され、研究の詳細情報が提供されています。論文のタイトルは『Persistent homology elucidates hierarchical structures responsible for mechanical properties in covalent amorphous solids』です。興味のある方はぜひ、論文をチェックしてみてください。