摂南大学と住友ベークライトの新たな挑戦
摂南大学の電気電子工学科において、西恵理准教授が中心となり、「乳児用哺乳センシングデバイス」の共同研究を行っています。これは、住友ベークライト株式会社と2021年に始まったプロジェクトであり、赤ちゃんの吸てつ力の可視化を目指しています。この革新的なデバイスは、赤ちゃんの舌の動きを計測することで、母乳を飲む力を科学的に評価することが可能です。
研究が生まれた背景
母乳育児は、赤ちゃんにとって健康や成長に欠かせない要素ですが、その吸てつ状態を把握できないと、母親にとっては大きなストレスとなります。従来、吸てつの状態を測定するための客観的な方法がなく、母親は主観的な感覚に頼るしかありませんでした。そこで、科学的根拠に基づいた育児支援の必要性が高まってきたのです。
共同研究の具体的な取り組み
西准教授はこれまで赤ちゃんの舌の動きの研究に注力してきました。その知見を活かし、住友ベークライトと共同で「哺乳センシングデバイス・システム」の開発を進めました。このシステムは、DuraQ®導電ペースト技術を応用しており、赤ちゃんの舌の動きを計測・解析することで、吸てつ状況を客観的に評価できる点が特徴です。
デバイスの具体的な使用方法
1.
助産師による装着: 助産師がデバイスを身に着け、小指部分にあるセンサーを赤ちゃんの口に挿入します。
2.
舌の動きを計測: デバイスは赤ちゃんに本来備わっている吸てつ反射を引き出し、舌の動きを計測します。
3.
データに基づくアドバイス: 授乳指標の数値化が行われ、助産師が母親に的確なアドバイスを行います。
今後の展望
現在、住友ベークライトは、各種施設での試験導入を進めており、すでに複数の施設での有料サービス提供が開始されています。今後は、舌運動データを活用した母乳の摂取量予測や疾患との関係性の研究、高齢者における嚥下障害や構音障害への応用など、幅広い医療・福祉分野での導入を計画しています。
このプロジェクトを通じて、科学的な知見の蓄積とその応用が進められ、将来的には社会実装に向けた取り組みが続けられることでしょう。新たな育児支援技術の発展に期待が寄せられています。
*掲載画像はすべて住友ベークライト株式会社提供。