スフィンゴ脂質の研究
2025-08-08 15:19:57

スフィンゴ脂質の曲がりが細胞に与える影響とは?新たな研究成果

スフィンゴ脂質の「曲がり」が細胞に与える影響とは?



岐阜大学応用生物科学部応用生命化学科の谷元洋教授を中心とした研究チームが、スフィンゴ脂質の基本骨格「スフィンゴイド塩基」の大部分を植物由来の構造に置き換えるという、世界初の成功を収めました。この研究は、出芽酵母を用いて行われ、スフィンゴ脂質の構造が細胞膜の機能にどのように影響を及ぼすかを解明する重要な手がかりとなっています。

研究の背景



スフィンゴ脂質は真核細胞の膜を構成する重要な成分であり、細胞内外での情報伝達や物質輸送、ストレス応答に関与しています。これらの脂質は、その基本構造が多様であることから様々な生理機能を担っています。しかし、特に未解明であったのは、屈曲構造を持つシス二重結合を有するスフィンゴ脂質が細胞膜内でどのように影響を与えるかという点でした。

研究の進め方



研究者たちは、スフィンゴ脂質の合成に関わる酵素遺伝子を破壊し、細胞外から新しいスフィンゴイド塩基を供給する方法を採用しました。こうして得られた変異酵母は、ほぼすべてのスフィンゴ脂質構造をシス二重結合を含むものに「置き換える」ことに成功しました。缶詰のように、見た目には変わらないものの、内側では大きな変化があったのです。

主な研究成果



研究結果の一部では、変異した出芽酵母の細胞膜の透過性が上昇し、細胞膜の構造が脆弱化していることが示されました。また、脂質マイクロドメインにおいて、重要な役割を果たすタンパク質の挙動に異常が見られ、細胞膜全体の安定性が低下していることが確認されました。これにより、スフィンゴ脂質の直鎖性が細胞膜機能の維持に不可欠であることが明らかになりました。

今後の展望



この研究により得られた知見は、膜脂質の多様性が生物学的に重要である理由を理解するための新たなアプローチを提供します。今後は、スフィンゴイド塩基だけでなく、親水性頭部や脂肪酸部分など他の構造に対しても置換を行うことで、膜脂質機能の解明を進め、細胞の構造と機能の関係についてさらに深く探求していく予定です。

研究成果の発表



本研究の成果は、2025年8月5日に国際的な生化学の専門誌「FEBS Open Bio」に掲載されました。この研究が、生物学的な膜脂質の多様性についての理解を深め、生命科学の新たな扉を開くことが期待されています。

まとめ



スフィンゴ脂質の構造がなぜそれほど多様性を持つのか、さまざまな研究が続けられる中、今回の研究成果はその多様性と細胞膜との相互作用について新たな方向性を示すものとなりました。この研究により、スフィンゴ脂質がどのように細胞膜機能に寄与しているのかを明らかにし、細胞生命のさらなる理解へとつなげられることが期待されています。


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