コウモリダコのゲノム解読
2025-12-19 18:33:20

和歌山高専が世界初のコウモリダコの全ゲノム解読に成功

和歌山高専がコウモリダコの全ゲノムを解読



和歌山工業高等専門学校のスティアマルガ・デフィン准教授は、共同研究で世界初となるコウモリダコ(Vampyroteuthis infernalis)の全ゲノム解読に成功しました。この研究は、島根大学、ウィーン大学、国立遺伝学研究所、東京大学、情報・システム研究機構と連携して行われました。今回の発見は、コウモリダコが約12 Gbpという巨大なゲノムを持ち、その構造が何を示唆するのかを探る重要なものであります。

コウモリダコのユニークな特徴



コウモリダコは、中生代に繁栄した古いタコの系統の生き残りであり、現在は深海に生息しています。生きた化石とも言えるその存在は、進化の過程を探る上での重要な手がかりとなります。今回解読されたゲノムは、知られている動物の中で3番目に大きく、非常に独特な特徴を持つことが確認されました。

この研究は、コウモリダコのゲノムが長鎖散在反復配列(LINE)の自己増幅性の転移因子の増加によって巨大化していることを示しています。この特性は、タコよりもむしろイカ類に類似していることがあります。つまり、コウモリダコは頭足類の祖先的特徴を保持し、タコ類が進化の過程で大規模な染色体融合と再編成を経たことが示唆されています。

研究の方法と成果



この研究のため、東海大学の実習船から提供された新鮮なコウモリダコの生体を用いて、国立遺伝学研究所が持つ先進的なDNAシーケンス解析機器を活用して世界初の全ゲノム配列解読に成功しました。ゲノムサイズの調査から、コウモリダコのゲノムは想定よりも4倍も大きく、他のタコとは異なる特性を持っています。

この見地から、進化の歴史を考察する際に、コウモリダコは「ゲノムの生きている化石」として注目されます。彼らの独特なゲノム構造は、イカやタコがどのように進化したのかを示す新たな証拠となるでしょう。

深海生物の新たな視点



本研究では、深海性の頭足類が古代から持つゲノム進化の特性が明らかになりました。これは、オウムガイ(Nautilus pompilius)のゲノムにおいても同様の構造が見られると考えられています。深海生物の進化の手がかりを得るために、今後の研究が期待されます。特に、コウモリダコの反復産卵のメカニズムや低代謝に関する機能研究が次のステップとして挙げられます。

研究の意義と展望



和歌山高専の研究は、深海に生息する生物の特性を解明し、生命の進化を理解する上での重要な一歩となります。今後、日本近海での深海生物のサンプル収集を通じて、さらに多くの発見が期待されることでしょう。生物学や遺伝学の観点からも、コウモリダコの研究が持つ意義は大きく、進化の過去と現在を紐解く重要な鍵を握っているのです。


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