IHIインフラシステムによる鋼橋の保守・補修デジタル化
日本のインフラは、経済成長期において急速に整備されたため、今、多くの構造物が老朽化の進行に直面しています。特に、鋼橋の保守・補修は、専門知識を有する人材の不足や、業務の効率化が求められる中での重要な課題となっています。ここで注目されるのが、株式会社IHIインフラシステムが導入したbestatの『3D.Core』です。この技術は、鋼橋の保守・補修業務のデジタル化・効率化を図るための新しいツールです。
3D.Coreの特長
『3D.Core』は、スマートフォンやドローン、360度カメラを用いて、容易に高精度の3Dデータを生成することができるクラウドサービスです。従来、鋼橋の補修プロセスでは、手作業でのデータ読み込みや高額な専用機器が必要でしたが、『3D.Core』の導入により、これらの負担が大幅に軽減されます。具体的には、撮影したデータをアップロードするだけで数時間後には利用可能な3Dデータが自動生成されるため、業務が迅速に進むのです。
保守業務の変革
従来の保守・補修作業では、エンジニアが何度も現地に足を運び、物理的な調査や採寸を行う必要がありました。特に、鋼橋の保守には各種ステークホルダーとの調整や資料作成が伴い、これには多大なコストと時間が必要とされました。しかし、『3D.Core』を使用することで、エンジニアは精度の高い3Dデータを短時間で収集でき、コストを抑えつつ、効率的な設計プロセスを開始できます。これにより、業務全体の効率化が実現し、必要なデータの準備にかかる時間を最大1/10にまで短縮することができるのです。
地域住民とのコミュニケーション
また、関係者や地域住民との良好なコミュニケーションも、『3D.Core』の活用によって強化されます。3Dデータを用いることで、工事の概要説明や情報共有が容易になり、住民の理解を促進するのです。リモートでの会議でも、リアルタイムで問題点や作業手順を確認できるため、情報の透明性が向上します。
足元の課題と未来への展望
日本は今、インフラ施設の老朽化が進行しており、国土交通省の推計では、2030年には54%、2040年には75%の道路橋が建設から50年以上経過する見込みです。このような中で、IHIインフラシステムが推進するデジタル技術の活用は、鋼橋の補修プロセスに革命をもたらします。『3D.Core』を通じて、手作業に依存することなく、柔軟なデータ生成と迅速な業務運営が可能になるのです。
今後はこの技術がさらに進化し、保守・補修だけでなく、様々な工程において活用されることが期待されています。IHIインフラシステムの橋梁技術本部デジタル改革部の松橋弘幸部長は、これからのデジタル化の進展と、スマートフォンなどの手軽なツールでの3次元化がもたらす業務効率化に期待を寄せています。『3D.Core』は、未来のインフラ保守を支える基盤として、より一層の発展が待たれます。