透明化組織標本の簡易3D観察を誰でも実現!デスクサイド光シート顕微鏡「descSPIM」が革命を起こす
生体組織は光学的に不透明なため、内部構造を詳しく調べるには、多数の薄切片を一つずつ観察する必要がありました。近年、組織を透明化する技術が登場し、生体組織をまるごと3Dで観察することが可能になりました。しかし、観察に用いる顕微鏡は高価で、専門知識も必要だったため、普及の大きな壁となっていました。
この課題を解決すべく、順天堂大学、自然科学研究機構、国立がん研究センターなどの研究グループは、誰でも簡単に組み立て・運用できる、低コストの光シート顕微鏡「descSPIM」を開発しました。descSPIMは、オープンソースのパーツリストとマニュアルが公開されており、光学に関する専門知識がなくても、生物学・医学研究者が自ら構築することが可能です。すでに国内外の多くの研究機関で導入され、運用が始まっています。
descSPIMの特徴と利点
従来の高額な光シート顕微鏡と比較して、descSPIMは以下のような特徴と利点があります。
低コスト: 300万円から導入可能で、従来の光シート顕微鏡に比べて大幅なコスト削減を実現しました。
簡易構築: オープンソースのパーツリストとマニュアルに基づいて、誰でも簡単に組み立てることができます。
高性能: 細胞レベルの解像度で、三次元的な組織構造を網羅的に観察できます。
汎用性: マウスの全脳イメージング、がん細胞への薬剤分布解析、三次元病理学など、幅広い研究分野に適用可能です。
具体的な応用例
descSPIMは、すでに様々な研究分野で活用され始めており、その可能性を大きく広げています。
マウス全脳イメージング: マウスの全脳を細胞レベルで3D観察することが可能になり、脳全体の神経回路や細胞のネットワークを詳細に解析することができます。
がん細胞への薬剤分布解析: 蛍光標識した抗がん剤を投与したがん細胞を3D観察することで、薬剤が組織内にどのように分布しているかを可視化できます。これにより、薬剤の効率的な開発や投与方法の改善に貢献することが期待されます。
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三次元病理学: 組織を3Dで観察することで、病変部位の三次元的な構造を詳細に解析できます。これにより、より正確な診断や治療の計画が可能になります。
今後の展望
descSPIMは、研究室レベルで誰でも簡単に3D観察を実現できる革新的な顕微鏡として、生物学・医学研究の分野に大きなインパクトを与えることが期待されます。今後の開発では、さらなる高機能化や自動化を進めることで、より多くの研究者に利用され、新たな発見につながることが期待されます。
研究者コメント
「医学部に着任し、現場で本当に必要なものとは何かを考え、完成させた顕微鏡です。技術の先鋭化ではなく、現場で役に立つものを作ることを目指しました。多くの方々の協力があってこそ実現できた成果です。」と、開発リーダーの大友康平准教授は語っています。
まとめ
descSPIMは、低コストで高性能な光シート顕微鏡として、組織透明化技術と組み合わせることで、生物学・医学研究の新たな可能性を切り開きます。研究室レベルでの3D観察を容易にすることで、様々な分野における研究の発展に大きく貢献することが期待されます。