免疫細胞pDC活性を可視化する尿中因子の発見
キリンホールディングス株式会社のヘルスサイエンス研究所が、和歌山県立医科大学およびNPO法人ヘルスプロモーション研究センターと共同で行った研究により、免疫細胞の一種であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化を示す尿中の因子を世界で初めて発見しました。この研究は、健康維持に重要な免疫の状態を測定・評価する新たな手法の開発に繋がる可能性があります。
研究の背景
インフルエンザや新型コロナウイルスなど、様々な感染症が日常生活に影響を及ぼしています。このような中で、持続的な感染症対策が求められるだけでなく、健康な状態を維持するための「免疫ケア」の重要性も認識されつつあります。本研究は、免疫の状態を示す指標としてpDCの活性に注目し、2022年から始まりました。
主要な発見
この研究では、尿中に存在する複数のタンパク質やmiRNA(マイクロRNA)がpDCの活性と関連していることを確認しました。具体的には、pDC活性の高い人々の尿中で、イムノグロブリンA(IgA)を含む多くの免疫関連タンパク質が高い割合で検出されました。これにより、pDC活性の高低が尿中のバイオマーカーで評価可能であることが示されました。
研究の方法
研究は2022年に和歌山県において実施され、51歳から55歳の住民223名を対象に特定健診が行われました。これらの参加者から血中のpDC活性データを収集し、pDC活性が高い参加者と低い参加者の尿中因子を比較分析しました。その結果、7,000種以上のタンパク質と70,000種以上のノンコーディングRNAの中からそれぞれ115種と96種の差異が見つかりました。
免疫意識を高める意義
本研究で得られた知見は、pDC活性を簡便かつ非侵襲的に評価できる指標の開発に繋がると期待されています。免疫の状態を知ることができれば、自分自身の健康を把握し、日常生活における健康維持に役立つでしょう。キリンホールディングスは、食と健康の新たな可能性を広げ、より心豊かな社会の実現に貢献していきます。
今後の展望として、25年5月に発表する予定の独自の検査サービスに本研究の成果を活用し、健康長寿社会の実現に向けてさらなる研究を進める方針です。