三井情報とEMEが共同開発した次世代抗体ライブラリーが医療に革新をもたらす

次世代抗体ライブラリーの誕生



三井情報株式会社と株式会社Epsilon Molecular Engineering(EME)が共同開発した、日本初の次世代抗体ヒト化ライブラリー「PharmaLogical™ Library」が発表されました。この新しいライブラリーは、VHH抗体医薬の研究や開発における速度と精度の向上を目指しています。

VHH抗体医薬の可能性


人間の免疫システムは、外部から侵入する病原菌や異物に対して抗体を生成し、無毒化や排除を行います。このメカニズムに基づいて開発された薬が抗体医薬であり、その中でも特に革新が期待されているのが、ラクダ科動物由来のVHH抗体です。EMEは、このVHH抗体を活用した抗体創薬に取り組んでいます。

しかし、VHH抗体をそのまま人に投与すると、アレルギー反応が生じる可能性があります。このため、ヒト化技術が必要とされています。さらに、抗体医薬の製剤化における不均一性を引き起こす要因として、アミノ酸の配列や糖鎖修飾が挙げられ、それらを最適化することが求められています。

「PharmaLogical™ Library」の特長


今回のPharmaLogical™ Libraryは、配列の最適化を施したVHH抗体のライブラリーです。具体的な特長としては以下が挙げられます:

1. 構造解析に基づいたデザイン


抗体のフレームワーク部分に、すでに臨床応用されたヒトFR配列とVHHの結晶構造解析データを元にデザインしています。これにより、VHH抗体特有のCDR3構造の多様性を再現でき、抗原認識部位を形成するCDRも効果的に設計されています。

2. 不均一性の抑制


修飾を受けやすいアミノ酸の出現頻度を抑制する設計がなされており、構造変化を引き起こす可能性のあるアミノ酸の影響を軽減します。これにより、製剤化プロセスにおける問題を最小化できます。

3. 革新的なスクリーニングシステム


PharmaLogical™ Libraryは、10の13-14乗(10兆~100兆)もの多様なライブラリーサイズを持ち、EMEのコア技術であるcDNA display技術と三井情報が提供するスクリーニングシステムを活用することで、革新的なVHHスクリーニングを実現します。

二社の強みを結集


EMEは進化分子工学に基づくハイスループットスクリーニング技術を強みとし、次世代抗体創薬に特化した取り組みを行っています。一方、三井情報は1970年代からバイオサイエンス事業に関与し、製薬企業やアカデミアとの共同研究も広く行っています。両社は2020年4月から業務提携を行い、VHH抗体に関連するスクリーニング技術と計算創薬を融合させる形でPharmaLogical™ Libraryを開発に至りました。

今後は、構造や熱安定性をさらに改善し、PharmaLogical™ Libraryの進化を続けるとのことです。また、製薬企業との共同研究を通じて得られたVHH抗体分子を臨床研究に進めつつ、医療の未来を切り拓くことを目指しています。

企業情報


  • - 株式会社Epsilon Molecular Engineering(EME): 2016年設立のバイオベンチャー。革新的な医薬品開発を手掛け、企業ミッションとして「未来のバイオ分子を創造する」を掲げています。

  • - 三井情報株式会社(MKI): ICT分野で半世紀の歴史を有し、デジタルトランスフォーメーションを支援しています。資源を活かした価値創造に注力しています。

いずれの企業も、バイオサイエンスと医療分野における進歩を追求し続けており、PharmaLogical™ Libraryの成功が今後の医療に与える影響に期待が寄せられています。

会社情報

会社名
株式会社Epsilon Molecular Engineering
住所
埼玉県さいたま市桜区下大久保255埼玉大学オープンイノベーションセンター研究棟
電話番号
048-858-6465

関連リンク

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Wiki3: 三井情報 EME PharmaLogical™ Library

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