シャープと東北大学が実現した自動搬送ロボットの新たな可能性
近年、物流業界では人手不足が深刻な問題となっており、効率的な運用が求められています。そんな中、シャープと国立大学法人東北大学が、量子アニーリング技術を活用した自動搬送ロボットの多台数同時制御エンジンを共同で開発しました。この取り組みは、効率的な物流管理を目指し、入出庫管理や商品の最適配置を実現するためのものです。
量子アニーリング技術とは
量子アニーリングは、複雑な問題を効率的に解決するために量子コンピューティング技術の一種です。具体的には、膨大な選択肢の中から最適解を瞬時に導き出す能力を持っており、従来の汎用コンピュータでは膨大な時間を要する計算を一瞬で処理することが可能です。特に「組み合わせ最適化問題」において、その効果は顕著です。
開発の背景と目的
シャープと東北大学の共同研究は、昨年から始まりました。物流業界における人手不足を解決するため、自動搬送ロボットの多台数同時制御技術に焦点を当てています。今回開発されたエンジンは、千台規模のロボットを同時に制御できる能力を持ち、これにより物流センターなどでの運用の効率化が期待されています。
シミュレーテッド量子アニーリング技術の活用
この新たなエンジンの開発には、シミュレーテッド量子アニーリング(SQA)技術が使用されています。SQAは、従来の計算方法では非常に大規模な計算を必要とする問題を、簡略化しつつも高精度で解決できる技術です。千台のロボットによる最適経路の生成が瞬時に行えることを特徴としており、これにより従来は時間がかかっていた物流の流れがスムーズに運用できるようになります。
AIによる入出庫の最適化
さらに、シャープと東北大学は、このエンジンにAIを組み合わせた新しいアプリケーションも開発中です。AIを活用することで、商品の需要予測から入出庫管理、商品や作業者の配置に至るまで、全体の生産性を向上させることが目指されています。これにより、物流倉庫の運営が一新され、さらなる効率化が実現するでしょう。
今後の展望
両者は、2026年度中に本エンジンの性能評価や実証実験を行い、2027年度内には実用化を予定しています。これにより、より多くの企業がこの技術を取り入れ、効率的な物流システムを構築できるでしょう。また、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、研究はさらに高性能化が図られていく予定です。
SHARP Tech-Day’24での展示
実際にこの技術に触れられる機会が、2024年9月17日から18日にかけて東京国際フォーラムで開催される「SHARP Tech-Day’24」で提供されます。本イベントでは、「次世代SQAロボットストレージシステム」としてこの新しい自動搬送システムが参考出展される予定です。この機会に多くの方に関心を持っていただき、実際の活用方法を知っていただければと思います。
この共同研究が、物流業界にどれほどのインパクトを与えるのか、今後の動向に注目です。